がんが喉頭にまで達すると,声帯を動かす神経が影響を受け,声がかれるということも起こります。さらに進行すると気道が圧迫され,呼吸困難も見られます。
下咽頭がんは,頸部のリンパ節に転移しやすいため,首に触れた時に,しこりを感じることも自覚症状の一つです。
●中咽頭がん 地域的には九州,沖縄などの地域に多く発症する傾向にあり, また,世界的に見るとインド,東南アジア,フランス,イタリア,ロシアなどに多く発生する傾向にあります。 これらの地域は強いアルコールやたばこを好む地域でもあることから,これらが発症と関係していると考えられています。
中咽頭がんでは5年生存率は1,2期では80〜90%,3期で60%,4期で40%弱です。 ただ,中咽頭がんは他の領域にもがんが重複して生じやすいので注意したいところです。中咽頭以外に発症しやすい部位として,他の頭頸部,食道,胃などがあります。 下咽頭がんは全体で40%弱,1期で約70%,2,3期で40〜50%,4期で30%弱です。放射線単独治療の5年生存率は,1,2期の早期がんに限定すると40〜60%です。 咽頭がんはいずれも治療後の経過はあまり良くはなく,再発しやすいがんでもあります。また,咽頭がんは喫煙やアルコール摂取との関係が深いので,治療後はたばこやアルコールを控え,定期的にがん検診を受け,早期発見につとめることが大切です。
しかし,この治療法は中咽頭がんには有効ですが,上咽頭がんや下上咽頭がんへの適用は問題が多いようです。 上咽頭がんでは,超選択的動注で用いる動脈が抗がん剤による血管障害を引き起こして脳神経マヒを招くことがあります。 下咽頭がんでは,動注のカテーテル操作が難しいため,合併症を起こすことがあります。 また,喉頭がんでは,抗がん剤が誤って脳に流れて脳梗塞を起こす危険があるということです。 ただ,進行した上咽頭がんのなかで,がんが頭蓋底に入ったり,頭蓋内を壊したりした場合だけは例外で,命を救うことを優先し,脳神経マヒの合併症を覚悟して,超選択的動注と放射線の併用療法を行うこともあるそうです。