がん治療 手術・放射線・抗がん剤

がんの三大治療 緑の葉

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がん治療には,手術療法・放射線療法・抗がん剤治療の三大療法と呼ばれる治療法があり,以下に紹介します。
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治癒手術と非治癒手術
 
 がんの手術ではがんをすべて摘出し,がんの完治をめざす根治手術(がん細胞を完全に摘出したと判断される手術)とがんによる苦痛を和らげることや身体の負担を考え,がんの一部を摘出する姑息(こそく)手術とがあります。前者を治癒手術,後者を非治癒手術とも呼びます。

 
 手術療法ではがんの完全摘出すなわち根治手術を理想としますが,しかしがん細胞は目にみえないものであり,転移により摘出できなかった部位からがんが再発することは多く,がんを全部取りきれたと判断できるのは周囲の少数のリンパ節に転移している段階までで,それ以上進行していると根治手術は難しくなります。

 したがって手術は転移を起こす前の初期の段階において有効と考えなければなりません。現在は進行がんなどには手術の他に放射線療法や抗がん剤を併用する集学的治療が主流となっています。
 

拡大手術と縮小手術
 
 再発の防止を目的とし,より広い範囲する手術を拡大手術,体のダメージや負担を軽くするため切除する範囲を最小限にとどめる手術を縮小手術といい,がんの手術療法は現在この二つの方向で進んでいます。
 

 縮小手術が進められる一方で拡大手術も進められているのは,矛盾するようでもありますが,麻酔技術や術後の管理技術,補液の進歩などにより,従来はがんの存在が認められても切除をあきらめざるを得なかった部位の手術が可能になったためです。

 またそれぞれの臓器の所属リンパ節へは転移しやすいため,病巣部だけでなく,予防的にリンパ節まで取り除く,リンパ節廓清(かくせい)がおこなわれることも多くなり,再発防止という点で成果をあげているといわれています。

拡大手術

 拡大手術は成果をあげているという見解がありますが,一方では否定的な考えもあります。なぜなら,人間のからだは多くの器官が連携しあって機能しているものであり,拡大して切除するほど,トータルとして生命を維持する能力やQOLが低下してしまうからです。

胃がんの標準手術D2郭清と拡大手術
 進行胃がんの治療で,胃の周囲のリンパ節を広く切り取る拡大手術と, 一定範囲の切除にとどめる標準的な手術(D2郭清)では,治療効果にほとんど差がないという調査結果を日本の国立がんセンターがまとめ発表しました。  

 報告した同センター中央病院の笹子三津留副院長は「リンパ節を多くとったことで,患者の状態を悪化させている可能性もあり,標準治療 はD2郭清と考えるべきである。」と話しました。

 しかし, 1999年オランダで行われた胃がん手術の大規模な比較試験の結果は,日本の標準的な手術D2にでさえ,疑問を投げかけるものでした。
 
 この胃がんの比較試験の結果では,日本での標準的治療とされてきた胃の周囲のリンパ節の第2群と呼ばれる範囲まで取り除くD2手術は,より狭い範囲のリンパ節を取り除くD1手術より,5年生存率ではほぼ同等だったものの,手術時の死亡率や合併症の発生数で上回ってしまったのです。

膵臓がんの標準手術と拡大手術
 膵臓がん(膵頭部浸潤性膵管癌)治療の研究報告ではリンパ節廓清のみの標準手術とリンパ節・神経叢の広範囲廓清を行う拡大手術とを比較した場合,3年生存率が標準手術で29.3%,拡大手術で15.1%と下がり,このケースでの拡大手術は生存率の低下を招き,延命効果のないことを立証しています。

拡大手術の問題点 
 リンパ節はがん細胞を抑える働きのあるリンパ球が集まる部位でもあり,拡大手術によるリンパ節廓清による免疫力低下も問題点としてとらえなければなりません。この廓清はさらに神経繊維をも切断し,機能障害を起こすこともあります。

 医師の間でも,再発とQOLのバランスを考えると,どこまで切除すべきか意見が分かれるところです。いずれにせよ拡大手術は体へのダメージや免疫力の低下,術後のQOLの低下が大きくなることを覚悟しなければなりません。
 
 また,がん治療の手術に限らず,長時間にわたるような大きな手術は細胞の生体反応により,全身性の炎症反応が起こり,それが多臓器不全などの合併症につながり致命傷になることもあります。



縮小手術

 再発を考慮すると安易に切除範囲を縮小することも危険がありますが,縮小手術は体への負担も少なく,手術後の完全な社会復帰も可能であり,多くのメリットがあります。

 この縮小手術が進んで行われるようになった理由として,過去のデータから早期がんの場合,切除する必要性がない部位がわかるようになったこと,診断装置や診断法の進歩により早期のがんの発見が可能になったこと,放射線や化学療法の進歩で治療を補うことができるようになったことなどがあげられます。
 
 近年は医療器具や治療技術の進歩などにより,臓器の働きや機能をできるだけ残すようにする機能温存手術も進んで取り入れられるようになりました。

 喉頭の発声機能や排便機能,性機能などを始め多くの部位で機能を温存する工夫がされ,慎重に行われるようになっています。これには患者の手術後のQOLを重視するという考え方が広まってきた背景もあります。また開腹せずに手術が可能な内視鏡手術や腹腔鏡手術も急速に普及しています。

内視鏡手術 
 内視鏡治療は,開腹せずに行うことができ,がん治療のなかでもきわめて侵襲が少なく,患者への負担が軽い治療です。高齢者でも可能で,静脈麻酔を行うことで苦痛も少ない手術です。

 開腹手術と比較して,入院期間も半分以下と少なく,早期に社会復帰が可能で,QOLの低下もほとんどなく,治療費が開腹手術に比較して安いというともメリットと言えます。

 ただし,問題もあります。きわめて少ない頻度ではありますが,出血や穿孔(せんこう)などの事故が起きることがあるということです。

 また,内視鏡治療は開腹しないため,治療できる部位は限られます。治療可能な部位は,食道,胃,大腸,などの消化管や胸腔,胆嚢,膀胱などです。またリンパ節転移がなく,腫瘍がすべて一括切除できる早期の大きさであり,かつ組織型が分化型などの条件があります。

 消化管のがんでは,内視鏡の先端からリング状の針金(スネア)を出して,患部にはめ,このスネアを絞り込むことによって病巣を突出させ,高周波電流を流して焼き切るというポリペクトミーと呼ばれる治療法や病巣の粘膜の下に生理食塩水を注入してがん病巣を浮き上がらせ,スネアでつまみあげ,焼き切るという粘膜切除術(EMR)も行われています。

 また,近年では粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)も確立され,ITナイフの開発で病変の大きさにかかわらず,多くの場合早期のがんであれば一括切除が可能となりました。

腹腔鏡下手術
 腹腔鏡と呼ばれるカメラを入れ,開腹せず,カメラや治療器具を入れ,患部を取り出す最小限の切開で手術を行う方法を腹腔鏡下手術と言います。 
  
 この手術は,開腹手術が20cm以上に大きく切開しなければならないのに対して,切開部分も5cm以下と小さいため,患者の負担が少なく,術後の痛みも少なく,1〜2週間で退院できるというメリットがあります。

 この手術が導入されたのは1990年代初頭で,当初はリンパ節の郭清ができなかったり,摘出する部位も限定されていましたが,その後技術の進歩により,適応範囲も拡大しています。

 腹腔鏡手術は高度な技術が要求され,施設によっても格差があるので,治療数などよく調査しておきたいものです。まだ標準的ながん治療とされてはいませんが,今後もさらに普及し発展する治療法であると考えられます。
 

セカンドオピニオンを取り入れ,QOLの確認を  

 手術においては再発の防止を優先させるか,術後のダメージを最小限に抑えることを優先するかで,どこまで切除すべきか判断が難しいところがあります。

 リンパ節の廓清などは,医師や病院の考えにより,より大きく行うところとそうでないところと差があり,この手術が本当に必要なのか,他に選択肢はないのか,セカンドオピニオンを取り入れ,手術は慎重に行いたいものです。 

 延命を目的とした手術がかえって死期を早めてしまうこともあります。また手術後にどれだけQOLが保てるのか,すなわちどのような不具合が生じるのか医師によく確認しましょう。
 
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放射線療法
手術療法
放射線療法とは

 X線やガンマ線などの電磁波をがん細胞へ照射することによって,がん細胞を死滅させる方法です。手術と比較すれば,大きな変形を加えずに済み,肉体的負担が少ないということがメリットです。放射線療法は手術と同じように局所療法の一つであり,手術や化学療法と併用して,大きな効果をあげることができます。
 
 放射線により効果のあるがんはある程度限定されます。たとえば白血病,神経芽細胞種,悪性リンパ腫,扁平上皮がん,腺がん,膀胱がん,脳腫瘍,骨肉腫,メラノーマなどは効果があるとされていますが,大腸がん,肝臓がん,前立腺がんなどは感受性が低く,これまでの治療方法では効果もあまり期待できないと言われています。 

 放射線は周囲の細胞も死滅させるので,正常細胞の被爆を少しでも少なくするために,手術中に患部に照射する術中照射法,小さな放射性物質を病巣に埋め込み,ガンマ線による治療を行う小線源治療法などがあります。

  
新しい放射線療法

 
放射線治療の理想は「がん細胞には最大の線量を,正常細胞には最小限の線量を」という言葉で表現されるように,がん細胞のみにピンポイントで照射することです。
 
 しかし,がん細胞は体の内部にあるため,放射線が正常細胞を突き抜けないと,がん細胞には到達しません。したがって,複数の角度からがん細胞へ集中して照射することで,正常細胞への影響を極力減らすという方法が試みられています。この方法は定位放射線治療またはラジオサージェリと呼ばれています。また粒子線を使った治療では,がん細胞内部で最大のエネルギーが得られるようコントロールされています。


粒子線治療
 近年,サイクロトロン(円形加速器)やシンクロトロン(同期加速器)などの加速器を使って,陽子や炭素の原子核を加速し,がんに集中して照射する治療法が確立されました。 粒子のなかでも陽子を使う粒子線治療を陽子線治療と言い,炭素の原子核を使う治療を重粒子線治療と言います。

 この粒子線治療の特徴は粒子が運動を停止する直前に最大のエネルギーを放出するという性質(ブラッグピーク)を利用し,がん病巣内部で粒子が最大のエネルギーを放出するようコントロールされているということで,従来の放射線治療では困難であった膵臓などのがん治療にも成果をあげています。

 特に重粒子線治療では,X線やガンマ線で殺せないタイプのがん細胞も殺すことができます。しかし胃や腸のように不規則に動く臓器や,白血病のように全身に広がっているがん,広く転移したがんには適応できず,効果は固形腫瘍に限定されます。

ガンマナイフ
 この治療装置
は,ヘルメット型の固定具を患者の頭部にかぶせ,そのヘルメット型の固定具から,コバルト60という放射線が,がん細胞の1点に集中して放射されるというもので,脳腫瘍の治療に使用され,ナイフで切り取ったようなシャープな効果が得られることから,このように呼ばれています。30年ほど前から始まり,脳腫瘍には治療実績もあります。ただし,患者の頭部は動かないよう金属でしっかりと固定される必要があります。

サイバーナイフ
 ガンマナイフをさらに進化させた治療器がサイバーナイフと呼ばれるものです。この治療法では自由な位置と角度から弱いX線を患部の1点にコンピュータ制御のロボットにより集中して照射します。2台のX線透視用カメラが患者の動きをモニターし,患者のセットアップ時のずれや治療中の微妙な動きを自動的に検出し,ビームを補正します。 

 この装置では病巣位置の確認のため,メッシュ状のマスクをつけますが,ガンマナイフと異なり,頭部を金属で固定する必要がありません。

 日本ではまだ首から上の脳腫瘍や耳鼻科,口腔外科の腫瘍などに限定されますが,この方式でアメリカなどでは肺がんや膵臓がんへの治療も行われ,正常細胞へのダメージが少ないことから今後の発展が期待されます。

Xナイフ・アキュナイフ(リニアックナイフ)

 従来から使用されてきたリニアックまたはライナックと呼ばれる直線加速放射線治療器にXナイフと呼ばれるシステムを組み込むことで,病巣部に多方向から正確に1mm〜2mmという誤差で集中照射が可能となりました。またアキュナイフを組み込むことで病巣の形に合わせた不整形照射も可能となりました。
 
 ガンマナイフと違って多数回照射(分割照射)ができるので,病変部位周辺の正常細胞への影響を低く抑えることができます。またガンマナイフより大きな病巣も治療できます。治療成績はガンマナイフと同程度といわれ,主に頭頸部がんに使用され,前立腺がんなど体幹部のがんにも照射が検討されています。全国の基幹病院で採用されています。

トモセラピー
 次世代放射線治療装置トモセラピー(TomoTherapy)も世界的に注目されている治療器です。このメカニズムは放射線照射装置にヘリカルCTの原理を応用し,放射線ビームをらせん状に回転させながら患部のみ正確に照射することを可能にしたものです。この装置はピンポイント照射が可能なだけでなく,複雑な病巣や,一度に複数の腫瘍に対応できるというメリットがあります。

 
従来は難しいとされていた前立腺がんや多発性肺がんなどの放射線治療も可能となり,集中照射から広範囲な照射まで可能なため,サイバーナイフやXナイフより多くのがんに対応できます。

ノバリス
 ノバリスと呼ばれる強度変調放射線治療器も登場しています。これもいろいろな方向から立体照射ができますが,照射する面の病巣の形状に合わせてビームの形,密度を瞬時に変化させることができるという画期的なものです。さらに動体追跡装置も組み込まれており,がん病巣への正確な照射が可能です。

 照射位置決定が高速で処理され,患部に高エネルギーを集中できるため,治療時間が20分〜30分と短く,外来でも治療が可能というメリットがあります。リニアックを用いたXナイフが主に頭頸部腫瘍対象であるのに対し,それ以外にも肝臓がん,肺がん,脊椎がん,前立腺がん等全身のがん治療が可能です。

 効果は手術と同等かそれ以上と言われていますが,ピンポイント照射を得意としているだけに,広範な遠隔転移や腫瘍の形がはっきりしない型のものには使えません。


フォーカルユニット 
 放射線治療装置(ライナック)とCTを一体化させた装置です。放射線治療の前にCTで照射する部位を確認し,照射するため,高精度の治療が可能です。放射線の位置を縦・横・高さの三次元で変化させられるので三次元フォーカルユニットとも呼ばれています。
 
 この装置は日本で開発されたもので,この機器を設計した植松 稔氏によると,平面方向すなわち二次元で変化させる照射よりも正常細胞への影響が少なく,より効果が大きいということです。(下図参照−「明るいがん治療」より引用)

 
@                       A                      B
 図@二次元照射
 
 がん(図の丸印)を標的として矢印の方向から照射すると正常細胞(図のアミ部分)にも同じ量の放射線がかかる。正常細胞にダメージ(副作用)がでるので少量しかかけられないが広い範囲にかけるには向く方法。
 図A二次元ピンポイント照射 
 
 がん(図の丸印)を標的として複数の方向から照射する。
 一見効率が良さそうに見えるが,近くの正常細胞のダメージ(副作用)は図@とほとんど変わらない。
 図B三次元ピンポイント照射
 
 いろいろな平面のいろいろな方向から照射する。1カ所にかかる放射線は少量なので正常細胞にダメージを出さずに標的の腫瘍には大量に集中させられる。ダメージが少ないことは,頭への二次元照射では頭髪が抜けるが,三次元ピンポイント照射のみではめったに抜けないことからも分かる。

 
 このフォーカルユニットでは5cm程度の乳がんを切除せずに,治療に成功しており,その他大きな脳腫瘍,肺がん,肝臓がん,悪性リンパ腫の治療にも好成績をあげているとのことです。  
 
また植松氏はフォーカルユニットを改良し,肺がんなど呼吸とともに動く腫瘍を追跡照射するメカニズム(チェイシングビーム)を取り入れ,スーパーフォーカルユニットとして完成させています。
 このフォーカルユニットやピンポイント照射を詳しく知りたい方は,植松氏の著書「明るいがん治療」を参考にしてください。

最新放射線治療器のメリット 
 放射線治療はリンパ球を減らし,皮膚が赤くなったり,下痢を起こすなどの副作用もあります。また遅発性の副作用は長期にわたることもあります。これらの最新放射線治療器は患部のみピンポイントで照射できるため,正常細胞にダメージを与えず,これらの副作用を最小限に抑え,がん細胞を効率的に死滅させることができます。

 日本は欧米と比較して,放射線治療の分野では遅れをとっていると言われています。それは進行度が同程度のがんでも欧米が放射線で治療しているのに対し,日本では手術で切除しているケースが多いという理由にもよります。
 
 放射線に有効ながんは前述したようにある程度限られますが,このような最新機器を使ったがん治療では大きな成果が報告されており,是非活用したいものです。ただ国内に設置数が少ないことが難点ですが,最新放射線治療機器設置病院のページで紹介していますので参考にしてください。

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抗がん剤治療
抗がん剤
抗がん剤とは
 
 抗がん剤はそれ自体ががんを殺す能力を持ったものであり,投与方法としては静脈注射や経口投与などがあります。また患部へ直接投与する方法もあります。
 
 抗がん剤はあらゆるがん治療に使用されますが,放射線療法や手術療法の補助療法として,術前や術後に転移しているがんを縮小させる目的で使用される場合や,白血病や全身に広がった進行がんを抑制するという目的で使用される場合もあります。


抗がん剤の種類
抗がん剤の種類

 抗がん剤はがん細胞に対する作用の違いなどによりいくつかに分類できます。

代謝拮抗剤 メソトレキセート,シタラビン,フルオロウラシル,メルカプトプリン,ゲムシタラビンなど
 増殖の盛んながん細胞に多く含まれる酵素を利用して,分裂を抑え込もうとする薬です。代謝拮抗剤はプロドラッグといって,本来の働きをする前の化学構造をもった薬として投与されます。

 これががん細胞の中にある酵素の働きを受けて活性化され,がん細胞を死に至らしめます。しかし,この酵素は正常細胞にも存在するため,正常細胞もダメージを受けることになります。

アルキル化剤 シクロフォスアミド,イフォスファミド,ダカルバジン,チオテバ,ニムスチンなど
 マスタードガスという毒ガス兵器の研究の結果開発された薬です。アルキル化剤はDNAと結合し,DNAを傷つけ,細胞分裂時にDNAを破壊し,がん細胞を死に至らしめます。 

 これは細胞毒と呼ばれる毒薬です。したがって正常細胞にもダメージを与えるだけでなく,DNA損傷は正常細胞のがん化を促す可能性もあります。

抗がん性抗生物資 ダウノルビシン,イダルビシン,ドキソルビシン,ブレオマイシン,ピラルビシンなど 
 微生物からつくられたもので,一般的な抗生物質が細菌を死滅させるのと同様に,がん細胞を死滅させる抗生物質です。しかし主な原理はがん細胞のDNA合成阻害と,DNA鎖の切断であり,したがって正常細胞にも影響を与え,副作用として白血病,心筋障害や肺繊維症を起こすことがあります。

植物アルカロイド イリノテカン,ビノレルビン,ビンクリスチン,エトポシド,ドセタキセルなど
 植物から作られた薬剤で,細胞分裂時に機能する微小管というものの働きを阻害し,がん細胞を死滅させます。しかし微小管は神経細胞でも重要な働きをするため,手足のしびれなどの神経障害が起こることがあります。

プラチナ製剤 シスプラチン,ネダプラチン,カルボプラチン,オキサリプラチン
 プラチナの電極を使って細菌の培養をおこなっているときに,電極に使われているプラチナが培養液に溶け,殺菌作用をもつ化合物に変化していることがわかり,抗がん剤としても使われるようになりました。

 白金製剤はがん細胞のDNAと結合することで,DNAの複製を妨ぎ,分裂できなくなったがん細胞を死滅させます。 ほかの抗がん剤では効かない場合や薬剤耐性をもったがん細胞に対して効果を発揮するのが特長です。
 

分子標的治療薬 リツキサン,ゲフィチニブ(イレッサ),ハーセプチン,
              イマチニブ(グリベック),エルロチニブ(タルセバ)
 従来から使用されている抗がん剤は,がん細胞と正常細胞の構造を区別できずに,正常細胞やリンパ球などの免疫細胞までダメージを与えてしまうという副作用がありました。しかしがんのみが持つ特異構造が解明され,その特異構造のみに働く分子標的治療薬が開発されています。


抗がん剤の問題点
 抗がん剤の問題点は,正常細胞にもダメージを与え,嘔吐,下痢,脱毛など多くの副作用を伴うことと,免疫細胞の力まで低下させてしまうことがあげられます。

 また抗がん剤投与を受けて生き残ったがん細胞は,その薬剤に対して抵抗力をもつがんへと変化してしまうことも多く,したがって異なった種類の抗がん剤を同時に併用する多剤併用療法が必要です。
  
 

新しい抗がん剤治療

分子標的治療 
 近年の分子生物学の進歩により,がんだけが持つ特異抗原やがんの増殖を引き起こす酵素やタンパクが明らかになり,これらに集中してはたらく薬剤が開発され,分子標的薬と呼ばれ,大きな効果もあがっています。
 
 この薬剤はこれまでの抗がん剤と異なり正常細胞への影響はないとされていましたが,一部に予想外の重篤な副作用も報告されています。

リツキサン
 悪性リンパ腫の治療に使われ,リンパ腫のCD20抗原にはたらくモノクローナル抗体で,単独で30%以上の奏効率を示しています。

ゲフィチニブ(イレッサ)

 小細胞肺がんの治療に使われ,がんの増殖に関係するチロシンキナーゼという酵素を阻害する薬剤です。20%の患者の腫瘍が縮小し,腫瘍の成長の停止まで含めると60%の患者に効果があったという報告がありますが,一部に急性肺障害や間質性肺炎などの副作用が報告されています。

 この副作用は特に放射線治療を受けた患者に多いというデータがあります。放射線で傷ついた細胞が修復される時に発現するレセプターが細胞の増殖に関するもので,これはがん細胞が発現しているレセプターと同じものです。したがって増殖しようとする正常細胞までがこの治療薬の影響を受けてしまうことが副作用の原因であると考えられています。

ハーセプチン

 乳がん治療に使われ, がん細胞の表面に存在するHER2受容体に結びつく抗体で,転移性の乳がんの中でも,HER2強陽性と判定された患者のみに効果があらわれています。 化学療法との併用で奏効率や生存期間の延長が得られ,乳がんの新しい治療薬として期待されていますが,一部心臓障害などの副作用も報告されています。

イマチニブ(グリベック)
 慢性骨髄性白血病CML)や消化管間質腫瘍GIST)の治療薬です。異常細胞を産生させるBCR−ABLチロシンキナーゼという酵素を選択的に阻害するはたらきがあります。現在,これらの疾病に対して高い臨床的有用性が認めら,注目されている薬剤です。しかし,吐き気,血小板減少症をはじめとする副作用も一部の患者に認められています

エルロチニブ(タルセバ)
 非小細胞肺がんの治療薬でイレッサ同様がんの増殖に関わるチロシンキナーゼを標的とし,そのはたらきを阻害します。化学療法無効患者や化学療法後のがん悪化患者を対象にした臨床試験では,偽薬投与群の延命が平均4・7カ月だったのに対しタルセバ投与群は平均6・7か月延命し,有意差があったとして,現在厚生労働省に承認許可の申請をしているところです。

分子標的治療薬の問題点
 正常細胞に影響を与えない,画期的ながんの治療薬として開発され,期待された分子標的治療薬ですが,効果があるのは患者の一部であり,また,がんが進行していくと効果が薄れていくことが多いということがわかってきています。

 これはがんの変異した遺伝子は1種類ではなく複数あり,進行すると遺伝子の変異が増加し,対応しきれないことが効果があがらない原因の一つと考えられています。

 また,一部の患者には上記に示したような副作用も見られ,本来なら影響がないはずの正常細胞にも影響を与えているケースも考えられます。

新しい抗がん剤の利用方法
 
 近年,抗がん剤治療の現場では,がんが縮小しなくても,長期にわたり増殖しないならそれを効果があるとする考え方が広まりつつあります。

 それは大量の抗がん剤によりがんの腫瘍が縮小しても,免疫細胞を初めとする正常細胞がダメージを受けてしまい,結果として延命につながらないことも多いということや,がんが縮小しなくともある程度の大きさで増殖しないならばがんとの共存という形で延命できることがわかってきたからです。

 このような考え方から,抗がん剤の投与を通常より少ない量から始め,副作用が強すぎず,しかし副作用がゼロではないという量に至るまで投与量を加減しながら,長期間にわたりがん治療を続けるという方法を行っているところもあり,「がん休眠療法」と名付けられています。

 また,厚生労働省はこれまで抗がん剤の承認は,人体への安全性と,がんの縮小効果が必須条件であったのに対し,がんが縮小しても延命効果につながらないこともあるため,2006年から延命効果の確認を義務づけました。

セカンドオピニオンの重要性

 がん治療法は医師の間でも意見が分かれることも多く,よく言われるように,セカンドオピニオン(主治医以外の第二の意見)を大切にしてほしいと考えます。
  
 アメリカでは医師がセカンド・オピニオンを尊重し,定着していますが,日本では主治医に気兼ねをすることも多く,まだ普及していないのが現状です。
 
 がん治療法が多岐にわたり,しかも新しい治療法が次々と開発されているがん治療では,情報の収集とセカンド・オピニオンが何より大切になってきます。

 最近ではセカンドオピニオン専門の窓口を設ける病院も増えています。しなくても済んだ手術をしてしまったなど,あとで後悔しないためにも,一人の医師の意見を絶対と考えず,積極的にセカンドオピニオンを求めましょう。  

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