膵臓がん・がん治療

膵臓がんは高齢者ほど罹患率が高く,治療も難しいがん
  膵臓がんの治療  

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膵臓がん 特徴と発症率・生存率

   
膵臓がんは,治療が困難で,がんの中でも生存率が最も低いがんのひとつとして知られています。

日本では年間,膵臓がんよる死者も年間2万9000人以上になります。この数値は,全死亡者数の2.4%に相当します。

全国膵癌登録調査報告によると,膵癌の切除できた症例は全症例の39%で,その5年生存率は14%という厳しい現実があります。

死因として,肺がん,胃がん,大腸がん,肝臓がんについで5位となっています。

日本膵臓癌登録データによると,男性の罹患患者数は女性の1.6倍となっており,男性に多くみられるという特徴があります。

膵臓がんの治療が困難な理由の一つに早期発見が大変難しく,発見時には手術が出来ないほど進行していることがほとんどであるという点があげられます。

治療が困難なもうひとつの理由は,膵臓がんは早期から浸潤,転移しやすいことです。また,放射線治療においても,膵臓は多くの臓器に囲まれているため膵臓のみに照射することは難しいという問題を抱えています。

しかし,近年手術法の改善,重粒子線治療や抗がん剤の研究の進歩により,治療成績の向上が期待されるようになっています。
 

 



 

 
膵臓の構造と機能
膵臓は胃や十二指腸に囲まれ,腹部大動脈の前に水平に位置する長さ15cm,幅約3cm,厚さ約2cm程度の臓器です。

膨らんだ部分は膵頭部と呼ばれ,また逆方向の細くなっている部分を膵尾部と呼び,その中間を膵体部と呼んで,それぞれ3等分されています。

膵頭部は図からもわかるように,十二指腸と接触し,さらに胆汁の通り道である胆管や肝臓への静脈である門脈と接触しています。

膵臓のはたらきは大きく2種類あります。その一つは血液中の血糖値をコントロールするホルモンの分泌であり,もう一つは消化を助ける消化酵素の分泌です。
 
血糖値をコントロールするホルモンとして血糖値を下げるインスリンと血糖値を上げるグルカゴンがあり,これらがランゲルハンス島と呼ばれる内分泌細胞から血液中に送り込まれます。
 
また消化酵素にはアミラーゼ,トリプシン,リパーゼなどの,炭水化物,たんぱく質,脂肪の消化を助ける酵素があり,これらを含んだ膵液が外分泌細胞から十二指腸へと送り出されます。

腫瘍や膵炎で,インスリン産生細胞がダメージを受けると,インスリン分泌量が低下して,糖尿病を併発するケースもあります。
   




 
膵臓がんの原因 
大腸は盲腸から時計回りに上行結腸,横行結腸,下行結腸,S状結腸までの結腸と,直腸に大きく分けられます。


結腸と直腸をあわせた長さは1.5mほどで,大腸がんを発生部位によって結腸がんまたは直腸がんとよぶこともあります。大腸がんが最も発生しやすいのは直腸とS状結腸で,全体の7割を占めます。


大腸の壁の構造は,内側から粘膜,粘膜筋板,粘膜下層,固有筋層,漿膜下層,漿膜という層からなりたっており,がんはこの粘膜から発生します。

大腸がんはその形態により,腺がんと表在性のがんにわけられます。大腸に発生するポリープはその形態(大きさや長さなど)から,「有茎性」「亜有茎性」および「広基性」と分けられます。広基性のように明らかな茎がないものは表在性と呼びます。

大腸がんの90~95%をしめるのは,粘膜層の腸腺に発生するがん(腺がん)です。このタイプのがんは比較的発見が容易で,ポリープががんに変化するまで何年もかかるため,ポリープのうちに切除すれば予防ができます。

大腸がんの生存率は比較的高く,5年生存率は平均60%~70%です。がんが腸壁にとどまっている早期のがんでは5年生存率は90%になります。
 
 
 

大腸がんの原因

 
大腸がんの原因はまだ十分に解明されてはいませんが,それでも近年の研究により,食事などの生活習慣が大きく関わっていることがわかりました。また,一部は遺伝的要素もあります。


食生活習慣
  
大腸がんの原因とも考えられる生活習慣に関しては,肉などのタンパク質や動物性脂肪の過剰摂取,食物繊維摂取不足,喫煙,アルコールの多飲などがあげられます。

肉食中心の食生活 
動物性脂肪は,消化・吸収される過程で悪玉菌により,発がん物質が生成され,腸の粘膜をがん化させると考えられています。

脂肪やタンパク質の摂取量が増加し,食物繊維の摂取量が減ると,便が腸内に停滞することが多くなり,その結果,腸内粘膜への発がん物質の影響が高まることが多くなります。

食物繊維は発がん物質が粘膜に接触することを減らし,発がんリスクを低下させます。また食物繊維が腸内細菌の発酵により分解されると,単鎖脂肪酸が産生されます。単鎖脂肪酸は,悪玉菌の増殖を抑え,乳酸菌などの善玉菌を増やし,大腸がんの発生を抑制します。
 
このようなことから,第二次大戦後大腸がんが急激に増加したのは,食物繊維摂取の少ない肉食を中心とした欧米型の食事の普及が原因と考えられています。

国立がん研究センターの「生活習慣改善によるがん予防の開発に関する研究」によると,ハム,サラミ,ベーコンなどの貯蔵肉と大腸がんはほぼ確実に関連していると報告されています。
 
これらの貯蔵肉は,加熱などの調理によって「ニトロソ化合物」「ヘテロサイクリックアミン」「多環芳香族炭化水素」などの発がん物質が生成されます。

同センターの研究報告では,45歳~74歳の男女8万人を追跡調査したところ,男性でハムやソーセージを含めた肉類全体の摂取量が,1日約140グラム食べるグループは約20グラムのグループの約1.4倍,女性では1日100グラムのグループは約15グラムのグループの1.5倍のリスクになることが報告されています。


喫煙
ある研究報告によれば,大腸がんに限らず,男性のがんの3割は喫煙が原因であり,喫煙者が大腸がんで死亡するリスクは非喫煙者の1.4倍にもなります。

また,毎日の喫煙量が多く,喫煙年数が長い人ほどリスクが高く,大腸がんでも若いころから喫煙をしていた人ほどがんの発症率が高いと報告されています。 タバコには,発がん物質だけでなく,がん細胞の増殖を助長するプロモーターの成分もふくめると,約200種類入っていると言われています。

発がん物質としては「ニトロソ化合物」「芳香族化合物」「芳香族アミン」「アセトアルデヒド」「ヒ素」など60種類もあります。

禁煙はストレスにはなりますが,大腸がんだけでなく,がん予防の見地から,すぐにでも実行する必要があります。   


アルコールの過剰摂取
ある研究によれば,適量を超えた飲酒の死亡リスクは,食道がんで4.6倍,大腸がんで2.1倍で,これはアルコールが大腸がんを助長させるものとしては明らかな数字です。

また別の研究では,アルコール摂取量が日本酒にして1日平均1合以上2合未満の人は,飲酒しない人に比べて,大腸がんの発生率が1.4倍,1日平均2合以上の人は,2.1倍でした。(日本酒1合と同じアルコール量は,ビールで大ビン1本,ワインでグラス2杯,ウイスキーダブルで1杯程度)
  
アルコールそのものは発がん物質ではありませんが,肝臓で分解される過程で生成されるアセトアルデヒドには発がん性のあることが動物実験で確かめられています。

また,アルコールは分解される時に多量の酸素を必要としますが,このとき細胞にも有害な活性酸素が大量に発生し,正常細胞の変異をもたらすと考えられます。

以上の点から,アルコールの飲み過ぎは大腸がんだけでなく,他のがんの原因にもなりうるということがいえます。
 


遺伝
大腸がんは多くは遺伝しないと考えられていますが,遺伝的要素もあり,大腸がんのなかで,約5~7%は遺伝によるものであると考えられています。大腸がんの患者の80%は細胞の増殖を抑えるApc遺伝子になんらかの異常があるとみられています。

特に遺伝性と考えられる大腸がんになりやすい病気として家族性大腸腺腫症があります。これは遺伝的にポリープを発生しやすい家系の人が発症しやすく,この病気になると大腸内に無数のポリープが発生し,やがて腺がんへと発展します。

また遺伝性大腸がんとして遺伝性非ポリポーシス性大腸がんがあります。 このがんはポリープを多発させないまま大腸がんを発症させるもので,遺伝子の異常によるものであり,大腸がんの5%~10%を占めます。 




 
  大腸ポリープについて
 
 これまでは大腸にできるポリープは悪性化しやすく,すぐにがんに変化しやすいため,すべて切除すべきと考えられていましたが,近年の研究により,ポリープが悪性化するのは一部であり,すべて切除する必要はないという考え方に変わりつつあります。

胃などにも良性のポリープはよく見られますが,そもそもポリープとは粘膜が傷ついた場合,その部分を細胞分裂によって修復し,その結果表面が盛り上がったイボのようなものなのです。

ただ,悪性化した場合のポリープは細胞分裂が止まらず,限りなく増殖を続けてしまう点が良性とは異なります。 

最近の研究によれば,ポリープという形態を経ずに,進行する平坦型や陥凹(かんおう)型のがんもあり,このタイプは早い段階でがんに移行することがわかってきました。

このタイプのがんであっても,早期ならば粘膜下層に生理的食塩水を流し入れ,へこんでいる部分を盛り上げて,ワイヤーによる高周波電流による切除(ストリップバイオプシー)も可能です。

しかし,粘膜下層まで多く浸潤してしまったり,固有筋層にまで食い込んでしまったがんはこのような切除は困難で,腹腔鏡手術などで広い部分の切除が必要となります。

 

 
  大腸がんの症状
 
早期の大腸がんではほとんど自覚症状はありません。しかし,血便や便通異常(便秘や下痢),腹痛などが見られることがあります。

2cm以下の早期がんは無症状のことが多いのですが,便に少量の血液がまじることもあります。

肛門からの距離がある盲腸がんや上行結腸がんでは排泄までの長さがあるため血便を自覚することは少なく,腹部のしこりや貧血症状があらわれてはじめて気がつくこともあります。

体の左側の下行結腸やS状結腸では,便も硬化しはじめるので,通過障害で便秘になったり,腹痛もあり,症状が重くなると腸閉塞を起こすこともあります。また肛門に比較的近いので,血便もわかりやすくなります。

直腸がんは肛門のそばなので,血液も赤みがあり,血便として気が付きやすい部位です。腫瘍がここにできるとその影響で便が細くなったり(便柱細小),残便感があったりします。

また,便秘と下痢を繰り返し,過敏性腸症候群と似た症状がみられた場合,直腸がんの「裏急後重」(りきゅうこうじゅう)という症状である可能性も考えられます。

肛門からの出血を痔と勘違いして大腸がんの発見を遅らせてしまう人も多いので内視鏡検査を受けることが必要です。
 
 
 

 
  大腸がんの病期(ステージ)
 
大腸がんの病期には,デュークス分類とステージ分類が使われます。大腸壁の中にがんがどの程度深く浸潤しているか,及びリンパ節転移,遠隔転移の有無によって進行度が規定されています。( )内は各病期の手術後の5年生存率を示します。

この2つの分類はわずかな違いなので,デュークスAは0・Ⅰ期に,デュークスBはⅡ期に,デュークスCはⅢ期に,デュークスDはⅣ期に相当するものと考えられます。デュークス分類は,国際的に広く用いられています。

デュークス分類

デュークス A(95%) 腫瘍が3項目(単発,2cm以下,血管への浸潤を伴わない)のうち,すべての項目が合致し,かつリンパ節転移,遠隔転移を伴わないもの。
デュークス B(80%) 腫瘍が3項目のうち2項目が合致し,かつリンパ節転移,遠隔転移を伴わないもの。
デュークス C(70%) 腫瘍が3項目のうち1項目が合致し,かつリンパ節転移,遠隔転移を伴わないもの。
デュークスD(25%) 腫瘍が3項目のどれも合致しないか,リンパ節転移もしくは遠隔転移を伴うもの
 
ステージ分類

 
 
  大腸がんの治療
 
現在大腸がんの最も有効な方法は手術と言われています。それは抗がん剤や放射線が大腸がんでは効果が低いという理由もあるからです。どちらかと言えば抗がん剤や放射線は手術を補助する目的で使われることが多いと言えます。
がんの切除する方法は進行度や発症している部位によって異なってきます。

内視鏡手術

手術がんが粘膜下層まで浸潤しておらず,リンパ節への転移がないものは早期がんに分類されこの場合約60%が内視鏡手術で治療できます。

現在では早期がんは適切な治療を施せば100%治癒すると言われています。早期がんと診断されるのは大腸がんと診断される人の20~30%です。

大腸早期がんで20mmまでのポリープ状のものは大腸ファイバースコープを入れ,スネアというリング状の器具でポリープを締め上げ,高周波電流で焼き切るポリペクトミーと呼ばれる治療が一般的です。

また,扁平なポリープには生理食塩水を注射し患部を浮き上がらせてスネアで締め上げ焼き切るストリップバイオプシーと呼ばれる治療法もあります。


腹腔鏡手術(化学療法)

 
早期がんでも,内視鏡的治療が困難な大きながんには腹腔鏡手術が行われます。また最近では進行がんでも腹腔鏡手術が行われるようになりました。この方法は開腹手術に比べ,患者の負担が少ないというメリットがあります。

しかし,進行がんに対しても開腹手術と同等の安全性や治療成績が得られるかどうかは評価が定まらず,現在,国内では進行がんに対する腹腔鏡手術と開腹手術の臨床比較試験が実施されています。

今後,患者への負担の少ない腹腔鏡手術はその適応範囲が拡大されると予想され,腹腔鏡手術を行う病院も増加しています。

開腹手術と比較した場合,痛み止めは開腹手術が平均して3~5日に対し,腹腔鏡は2~3日ですみます。また退院までの日数は開腹手術が10日前後に対して,腹腔鏡は1週間前後といわれています。

確かに,このように患者の負担が少ないことは事実ですが,高度なリンパ節郭清は技術が要求されるだけでなく,
腹腔鏡手術は歴史が浅いため,病院や医師によっては経験が不足している点も否定できません。

日本内視鏡外科学会の調査では,2006年からの2年間で大腸がんの腹腔鏡手術で縫合不全や出血などが原因で11人が死亡したと報告しています。
したがって,腹腔鏡手術を受ける際には,その医療機関の実績などをよく調査しておくいことも必要でしょう。


開腹手術


最近では内視鏡や腹腔鏡手術もさかんに行われるようになりましたが,大腸がんではリンパ節への転移が見られることが多く,現在でも大腸がんではリンパ節廓清のしやすい開腹手術が主流です。
 
大腸がんの根治手術は転移からの発症を防ぐため病巣から約10cmくらい離れたところまでを切除し,腸管に近い1群のリンパ節だけでなく2群,~3群までのリンパ節を廓清し,腸管を縫合する方法が一般的です。また結腸がんの場合このような方法でも,手術後の機能障害はほとんど起こりません。

直腸がんの根治手術は進行がんの場合,多くの問題を克服しなければなりません。それは直腸の周囲には,膀胱や尿道,前立腺,子宮,膣などの泌尿器,生殖器などがあり,さらに肛門など重要な器官があるからです。

直腸がんの根治手術は,大きくわけて2種類あります。その一つは直腸とともに肛門も切除し,S状結腸に人工肛門(ストーマ)をつくる方法であり,もう一つは肛門括約筋を残して,直腸を切除し,腸管を縫合して肛門をそのまま機能させる括約筋温存直腸切除術です。

現在では直腸がんの手術で約70%が肛門が温存され,下部の直腸がんでも約50%が温存されるようになってきています。

さらに最近では泌尿器や生殖器の機能に関係する自律神経を温存させる手術も確立し,術後のQOLの低下を抑えることができるようになりました。

これはがんの進行状態に応じて,個々の神経を見分け,自律神経をできるだけ残しながら病巣だけを切除していくというもので,この日本の直腸がん手術のレベルは世界最高水準にあるといわれています。

しかし,病期が3期以降では骨盤内臓器全摘出手術が行われることもあり,この場合,排尿機能や性機能は温存できなくなります。したがってこの方法を実施する場合は医師から術後の障害についてよく説明を受ける必要があります。


抗がん剤治療(化学療法)


大腸がんでは手術が根治のためには最も有効とされているため,抗がん剤治療は手術後の再発を防ぐ治療か,転移や再発して手術が困難な場合に使用されます。


手術後の再発を防ぐ,補助化学療法は一般的には、ステージ2までは補助化学療法は必要ないとされています。しかし,ステージ2でも再発の可能性があると判断された場合,補助化学療法が適用される場合もあります。


ステージ3の患者に対しては術後補助化学療法が行われ,5-FU(フルオロウラシル)とロイコボリンが投与される方法が一般的です。


内服薬で一般的に使用されているのは,UFT(テガフール・ウラシル)とユーゼルまたはロイコボリン併用です。また,TS-1とオキサリプラチン併用方法もありますが,大腸がんについては臨床試験中です。


また,再発した場合,抗がん剤はFOLFOX(フォルフォックス)とFOLFILI(フォルフィリ)という選択肢があります。


FOLFOXとは,5-FU(フルオロウラシル)とアイソボリン(レボホリナート),エルプラット(オキサリプラチン)の3剤を併用する治療法ですが,副作用も強く,しびれなどがあります。

またFOLFILIとは,5-FUとアイソボリン,カンプトまたはトポテシン(一般名イリノテカン)の3剤を併用する治療法ですが,副作用として吐気や脱毛などがあります。


分子標的治療薬


分子標的治療薬は抗がん剤の一種ではありますが,従来の抗がん剤とははたらきが異なり,がん細胞のみが持つレセプターや異常タンパクに集中してはたらく治療薬です。

正常細胞にはダメージを与えないがん治療薬として期待されてはいましたが,やはり副作用は見られます。

現在大腸がんに有効な分子標的治療薬としては2007年承認されたベバシズマブ(アバスチン)や
2008年に承認されたセツキシマブ(アービタックス)があります。

アバスチンは転移性大腸がんに使用される治療薬で,がん細胞が新たに血管をつくるはたらき(血管新生)を阻害し,がん組織への栄養・酸素の供給を遮断し,腫瘍の拡大,転移を阻害するというものです。
 

アバスチン単独ではがん縮小効果は弱いものの,抗がん剤と併用することでよい治療成績が得られ,海外の臨床試験では,アバスチンを長期間使用したほうが生存期間が延長すると報告されています。


アバスチンに特有な副作用として,出血,血栓症,消化管穿孔,血圧上昇などあります。

また,2008年に承認されたセツキシマブ(アービタックス)は,切除不能または再発大腸がんの治療薬です。

アービタックスは,がん細胞が増殖するために必要なシグナルを受け取るレセプターであるEGFR(上皮成長因子受容体)を標的とし,細胞を増殖させるシグナルを遮断することで,がん細胞は増殖できなくなります。

アービタックスについての臨床試験は欧州で「イリノテカンで進行を止められなかった転移性・進行性の大腸がん患者218人に対して,イリノテカンとアービタックスの併用療法で,半数の患者で進行を4カ月以上遅らせることができ,20%の患者では50%以上の縮小がみられた。」と報告されています。
 

アービタックスに特有の副作用として,海外の臨床試験では皮膚障害,とくににきび様の発疹が報告されています。



放射線治療


最新の放射線治療技術の進歩にはめざましいものがありますが,それでも大腸がんで有効な治療は手術です。 特にS状結腸や横行結腸は,動いているので正確に放射線を当てることが困難です。

大腸がんの中でも結腸がんは緩和的照射以外には放射線治療が用いられることはまれですが,直腸がんでは緩和的照射の他に術前照射や術後照射もよく用いられます。

欧米では術前または術後照射を積極的に併用し,手術による切除範囲を少なくすることで肛門括約筋の温存をはかっています。

しかし,日本では手術の治療成績が欧米よりもすぐれているため,術前・術後照射は標準的な治療法となっていませんが,肛門の機能を残すことができる放射線治療は今後も増えていくと考えられます。
 
放射線と抗がん剤を併用した放射線化学療法を行っている施設もあります。食道がん治療にはよく使用される治療法ですが,この方法ですと放射線量も減らるというメリットがあります。

併用する化学療法としては,5FU(フルオロウラシル)とLV(ロイコボリン)や5FUとCDDP(シスプラチン),イリノテカンなどが用いられます。

再発した大腸がんではまず手術が第一選択肢となりますが,遠隔転移している場合などは抗がん剤治療をおこないます。

しかし,抗がん剤治療の効果があまり見られなかったり,痛みを伴う場合などは再発した病巣に対して,腫瘍の縮小や痛みの緩和を目的に放射線を照射することもあります。


免疫療法


現在患者の免疫細胞を活性化させてがん細胞を殺傷させる免疫細胞の研究は日々進化していますが,標準治療とはなっていません。

この患者の免疫細胞を活性化させる治療は免疫細胞療法と呼ばれ,現在注目されています。この治療法の良い点は副作用がほとんど見られないことや手術や抗がん剤治療,放射線治療と併用できることです。

大腸がんの免疫療法として最近注目されている治療法としては,がんペプチドワクチン療法があります。

特に,北大の西村孝司教授(免疫学)ら研究グループはがんに対する免疫細胞として知られるヘルパーT細胞とキラーT細胞を同時に活性化させるワクチンの開発に成功しました。

従来のワクチン療法は,キラーT細胞だけしか活性化できませんでしたが,西村教授らはヘルパーT細胞とキラーT細胞双方の活性化が可能なハイブリッドがんペプチドワクチンを合成したのです。

臨床試験では,頸(けい)部リンパ節転移の乳がん患者と肺がんから転移した大腸がん患者に投与したところ,がんの消失や病巣抑制の効果を確認できたと報告されています。

がんに対して有効な免疫細胞は何種類もあり,どの免疫細胞をどのような方法で活性化するのかという点については様々な研究機関で研究が進められているところです。

さらに詳しく知りたい方は当HPの免疫細胞療法のページを参考にしてください
 


 
  手術後のケアについて
 

大腸がんの手術後はいくつかの合併症が見られることがあり,注意が必要です。合併症としては縫い合わせた部分がうまく接合しない縫合不全や手術創(傷)からの細菌感染があります。

これらは発熱や痛みを伴いますので,このような症状がでたらすぐに医師に報告しましょう。

また,手術後に腸の働きが悪くなり,便やガスが出にくくなることがあります。これは麻酔の影響や手術後の炎症で腸管が癒着したりすることで起こります。

手術後,腸の動きが回復してくると 通常手術の3~5日後にガスが出ます。しかし,腸の動きが鈍いと,便やガスがたまり,お腹が張る感じがしたり,吐き気やげっぷ,嘔吐などの症状が起こります。

このように,腸がうまく働かなかったり,腸の通りが悪くなった状態のことを腸閉塞(イレウス)といいます。


手術後の腸閉塞では,時間の経過とともに症状が自然に改善することが多いのですが,痛みや吐き気が続く場合,放置すると危険ですので,医師の診察を受けましょう。

また,食事がとれるようになっても,はじめのうちは無理をせずゆっくり,よく噛み,腹八分目を心がけ,食事の量や食欲,さらに排便の量や形などにも注意しましょう。



手術後の後遺症について


排便障害について

直腸がんの手術で直腸を切除すると,便をためておく部分が小さくなため,少しずつ何度も排便するようになったりします。直腸が過敏になり,便が直腸まで来ていないのに頻繁に便意を感じることもあります。


また大腸の大部分を切除した場合,腸の通過時間が短いため水分の吸収が不十分となり,便が泥状もしくは水様になったりすることがあります。


しかし,このような症状は徐々に安定してきますので,症状に合わせ,緩下剤や下痢止めなどの薬を使うなどして,排便障害に対処していきましょう。


排尿機能障害について

排尿機能障害は,直腸がんの手術で骨盤の中の自律神経が傷害を受けるために起こります。手術によっては自律神経も共にに切除する必要があり,その場合はある程度の排尿機能障害が避けられません。


軽度の排尿機能障害に対しては,膀胱の収縮を促す副交感神経刺激薬(コリン作用薬)や尿道の抵抗を少なくする薬剤が処方されます。


残尿が多い場合には、尿の出口からカテーテルを膀胱まで挿入し,尿を体外に排出する方法
(自己導尿)を行う場合もあります。


排尿機能障害は,症状や程度によって対処法が異なりますので医師にできるだけ具体的に自分の排尿障害の腫瘍状について相談しましょう。



治療後の経過観察と検査


根治手術で成功しても,結腸がんは約15%,直腸がんは約20%程度の人に再発する可能性があります。しかし,たとえ再発したとしても,大腸がんは再手術で完治も可能です。
したがって,治療後も5年間くらいは定期的に通院し,検査を受けることが大切です。
一般的に,手術後3年間は3~6ヵ月に1度,3年目以降は,約半年に1度の間隔で通院します。

通院の検査では大腸の内視鏡検査,胸部X線検査,腹部超音波(エコー),CT検査,血液検査(腫瘍マーカー)などの検査を行います。

5年経過した後も別の部位に新たにがんが発生する可能性があるため,検診などの定期的な検査が必要です。
 
   
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    膵臓がんの特徴 発症率・生存率

 膵臓がんは,治療が困難で,がんの中でも生存率が最も低いがんのひとつとして知られています。

 日本では年間1に万8000人が膵臓がんと診断され,膵臓がんよる死者も年間1万9000人以上になります。

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 膵臓がんの治療が困難な理由の一つに早期発見が大変難しく,発見時には手術が出来ないほど進行していることがほとんどであるという点があげられます。

 治療が困難なもうひとつの理由は,膵臓がんは早期から浸潤,転移しやすいことです。また,放射線治療においても,膵臓は多くの臓器に囲まれているため膵臓のみに照射することは困難です。

 しかし,近年手術法の改善,重粒子線治療や抗がん剤の研究の進歩により,治療成績の向上が期待されるようになっています。
 

   
         

 
 
 
         
      膵臓の構造
膵臓は胃の後部に水平に位置する長さ15cm程度の臓器です。 膵臓のはたらきは大きく2種類あります。その一つは血液中の血糖値をコントロールするホルモンの分泌であり,もう一つは消化を助ける消化酵素の分泌です。
 
 血糖値をコントロールするホルモンとして血糖値を下げるインスリンと血糖値を上げるグルカゴンがあり,これらがランゲルハンス島と呼ばれる内分泌細胞から血液中に送り込まれます。
 
 また消化酵素にはアミラーゼ,トリプシン,リパーゼなどの,炭水化物,たんぱく質,脂肪の消化を助ける酵素があり,これらを含んだ膵液が外分泌細胞から十二指腸へと送り出されます。
 
   
         
 
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    膵臓がんの原因
 現在のところ,膵臓がん発症の原因ははっきりと解明されていません。生活習慣が影響してすい臓がんになる方が増えていると考えられています。

 統計学的には,喫煙,肉食過多,野菜不足などが原因と考えられ,糖尿病患者や慢性膵炎の患者も膵臓がんになりやすい傾向があります。また50歳以上の高齢者に多いことも特徴です。

 近年の研究により,膵臓がんの患者の90%が18番染色体にある「DPC遺伝子」と呼ばれるがんの発症を抑える遺伝子に変異が起こっていることが解明されています。現在遺伝子の変異による膵臓がんの早期発見方法が研究されています。 
   
         
 

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  膵臓がんの症状
 早期では自覚症状があらわれにくいことが多いのですが,進行すると腹痛,背部痛,黄疸,体重減少,食欲不振などの症状が見られます。
 
 膵頭部と呼ばれる十二指腸側にがんが発症した場合には,胆管がつまることにより黄疸の症状を示すことが多くなります。 また膵頭下部や膵臓の中央に位置する膵体部,膵頭部と反対側の膵尾部に発症した場合は黄疸は見られず,腹痛がおもな症状です。

 膵臓がんは腹部の鈍痛として現れることが多く,血液検査でも異常が発見されにくいため,病院でも胃炎や胆石のための検査しか行われないことが多いようです。


 がんが発生して膵管を塞ぐようになると,膵液が滞り炎症が起こります。このときに。胃の痛みや背中に放散する痛みが起こります。この段階では,まだ早期である可能性も高いのです。

 しかし,この痛みはそれほど激しいものではなく,1~2週間で一時おさまることが多いため,がんが発見できず,一時的に治癒したかの様に思えて,腹部の痛みが再発し,進行してしまって,手術も不可能となるケースがあるので注意が必要です。

 以下に膵臓がんの症状をまとめました。 ただしこれらの症状は他の病気でもよくみられるものです。 

 食欲不振,吐き気,おう吐,腹痛,みぞおちや背中の痛み,腰痛,体重減少,消化不良,全身倦怠感,下肢のむくみなど
   
       
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    膵臓がんの検査

 膵臓がんの検査には,血液検査,尿検査,画像検査,組織検査などがあります。しかし,初期の症状は腹部などの鈍い痛みが多いため,胃腸が悪いのではと判断され,胃の内視鏡やエコー,レントゲン検査をして異常なしと診断されてしまうことも少なくありません。 


血液検査

 血液検査はがんが進行してから上昇することが多く,血液検査によって早期の膵臓がんの発見は難しいといえます。

膵臓の細胞が放出する酵素の値 
 
膵臓から分泌されるアミラーゼ,エラスターゼ,リパーゼの消化酵素の値が高くなるなど異常値を示します。

腫瘍マーカー値
 
CA19-9,CEA,Dupan-2などの腫瘍マーカーの値が上昇します。

糖尿病の発症の有無
 
膵臓がんは糖尿病を引き起こすことがあるため,血糖値やグリコヘモグロビンの上昇,インスリン分泌量の低下をしらべ,糖尿病発症の有無を調べます。



画像診断

超音波検査
 腹部へ発信器をおいて,画像診断します。患者の負担がなく,繰り返し行うことができるということが最大のメリットです。初期では主膵管の拡張が見られます。膵臓がんではエコーレベルが下がり,黒っぽく見えます。

CT検査
 CT検査(CTスキャン)はX線を用いていろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影しコンピュータを使って 非常に鮮明な画像を得ることができます。

 膵臓がんは,黒っぽい腫瘍像として写り、膵臓の尾側の膵管が拡張している像になります。必要があれば,腹部血管造影検査などの結果と組み合わせて,診断がなされます。

磁気共鳴胆管膵管造影(MRCP検査) 
 MRCP検査は核磁気共鳴画像(MRI)を応用した検査でMRIの画像処理技術の進歩により,従来は後述するERCP検査でしかみられなかった胆管,膵管像が簡単に見られるようになりました。

 エックス線の被爆がなく,患者に対する負担もありません。胆管と膵管の造影ができ狭窄や閉塞などの症状がでていれば見つけることができます。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP検査)
 胆管と膵管に造影剤を入れてX線撮影する検査で,特殊な内視鏡を口から十二指腸まで挿入し,造影剤を入れ撮影します。

 MRCPの検査よりも鮮明な画像を得ることがでますが,膵炎などの合併症が起こる可能性があること、技術的に難しい検査であることなどの理由から精密検査としておこなう検査になります。

 この時,膵液や胆汁を取り出して,細胞診や,膵臓がんに関係する遺伝子の異常を調べることができます。

血管造影検査
 血管造影検査は、足の付け根の動脈から細い管(カテーテル)を挿入して造影剤を注入し,膵臓に分布する血管をエックス線で映しだす検査です。膵臓の血管の状態、血流の状態を見ることで膵臓がんの診断や拡がり具合を判断し,手術の適応になるかの判断もできます。

PET検査
 陽電子放射断層撮影法とよばれ,薬剤FDGを投与し,がん細胞に集積されたFDGの放射線を映像化し,がんの有無,場所,大きさを特定するという方法でです。 患者の負担もなく,5mm以上なら発見できるというメリットがありますが,高額な費用(8万~12万)がかかります。 

 
   
 
 


膵臓がんの日本膵臓学界による病期分類

病期                           診断

I期

膵臓がんの大きさが2cm以下で膵臓の内部に限局している状態

II期

膵臓がんは膵臓内部に留まっているが,大きさが2cm以上である。または大きさは2cm以下であるが,第一群リンパ節まで転移がある状態

III期

膵臓がんは膵臓の外へ少し出ているがリンパ節転移は無いか,第一群リンパ節までに限られている。または,がんは膵臓内部に留まっているが第二群リンパ節まで転移している状態

IV期

がんが膵臓の周囲の臓器や器官に浸潤しているか,遠隔転移がある状態

膵臓がんのUICC病期分類(国際的に使われている分類)

病期                               診断

I期

膵臓がんが膵臓の内部に留まっているか,ごく近くの組織までに留まり転移は無い状態。

II期

がんは膵臓周辺の臓器や器官に浸潤しているが,リンパ節転移はない状態。

III期

がんは膵臓に隣接したリンパ節に転移している状態。

IV期

がんが胃や脾臓,大腸,大血管,肝臓,肺などに転移している状態。

 


         
    膵臓がんの治療
 膵臓がんの治療は手術,放射線,抗がん剤の三大がん治療がありますが,進行度が速い部位のため,発見されてから手術で切除可能なケースは10%~40%程度です。放射線に対する感受性も低く,また膵臓がんの腫瘍は血流が少ないため,抗がん剤もあまり効果的ではないとされています。

手術
 早期の段階では最も治療効果が期待できる治療法です。

 膵臓がんは,かつては血管浸潤があっても拡大手術が行われていました。 しかし,欧米や日本での臨床比較試験の結果,標準的な手術と拡大手術では拡大手術は合併症が増加し,生存率には大きな差がないという結論に達しました。

 したがって,現在では多くの施設で拡大手術は行われていません。しかし,一部の施設では拡大手術を行っているところもあります。

膵頭十二指腸切除
 膵頭部のがんでは,膵臓頭部,付近の胃のや十二指腸の一部,総胆管,胆嚢などを一緒に切除するのが一般的な方法です。最近では胃の出口にあたる幽門輪を残し,術後のQOLの低下を防ぐ方法も行われています。(全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術) 
 
 また,膵頭部付近にできるがんは黄疸をともなうことが多いのですが,近年皮膚からチューブを挿入して胆汁を外に出したり,人工胆道が開発されたりして,開腹せずに黄疸の症状を軽くする治療が可能となっています。


膵体尾部切除
 膵体・膵尾部のがんは膵頭部を残して切除する方法が一般的です。膵頭部側を残してがんができている膵臓と脾臓を切除します。

 また膵臓すべてを取り出す,全摘手術はインスリンの分泌がなくなり糖尿病になったり,外分泌系の消化酵素が分泌されなくなるため,最近ではあまり行われていません。


膵臓全摘出 

 膵臓のすべてを切除する手術で,膵頭十二指腸切除と膵体尾部切除を一緒に行います。この手術を行った場合には膵液を分泌する機能やインスリンを分泌する機能が失われてしまうため,インスリンを補う必要があり,消化不良にもなりやすくなります。


腹腔鏡下膵切除術
 最近では膵臓がんに対しても腹腔鏡切除を行う施設もみられます。腹腔鏡下膵切除術の適応となるのは、膵臓にできた良性か低悪性度の腫瘍です。

 膵臓は腹部の最も深いところ(後腹膜腔)に位置していることから,病理検査のために組織を採取することが難しく,画像診断だけでは良性腫瘍か,悪性腫瘍かを正確に診断することも難しいことがありこの腹腔鏡下膵切除術を実施することによって確実な組織診断が得られます。

 この手術の最大のメリットは患者への負担が少ないということで,開腹手術では2週間程度の入院期間を要するのに対し、腹腔鏡下膵切除術では1週間から10日間程度ですみます。


放射線治療
 
膵臓がんは放射線に対する感受性が低く,膵臓の周りを胃,十二指腸,小腸,大腸,肝臓,腎臓,脊髄など多くの臓器が囲んでいるため,膵臓への照射量も少なくせざるをえません。

 したがって,術中照射が効果的とされ,放射性物質をチューブに入れ,がんの中に埋め込む方法もあり,正常細胞へのダメージを少なくすることができます。

 
 現在,放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院で行っている重粒子線治療が膵臓がんの治療に成果をあげ,注目されています。この施設は世界で唯一重粒子線による膵臓がんの手術をおこなっているところです。

 この重粒子線治療の特徴は粒子が運動を停止する直前に最大のエネルギーを放出するという性質(ブラッグピーク)を利用し,がん病巣内部で粒子が最大のエネルギーを放出するようコントロールされているため,複数の臓器に囲まれている膵臓がんには最も適した治療法と考えられます。

 ただし,この治療を受けるには以下の条件をクリアする必要があります。
(1)肝臓や腹膜などに転移がない。
(2)過去に膵臓がんの治療を受けていない。
(3)介助なく身の回りのことができる。
(4)80歳以下。



抗がん剤治療
 膵臓がんは抗がん剤は効きにくいとされ,複数の抗ガン剤を組み合わせることも多いようです。抗がん剤としてよく用いられるものにフルオロウラシル(5-FU)があり,がんの切除後に放射線と併用することで再発防止に効果があるとされます。
 
 最近細胞内でで代謝され,三リン酸化合物となり,DNAの合成を阻害する作用を持つジェムザール(塩酸ゲムシタビン)という抗がん剤が開発され,延命効果や疼痛緩和効果などが認められています。

 手術ができない3期と4期の膵臓がんに対する治療法は,原則として抗がん剤治療か化学放射線療法(抗がん剤治療+放射線治療)になりますが,ただし,化学放射線療法は3期に対してのみ行われます。

 このジェムザールは外来で投与が可能で,毒性が少ないため,患者の負担も少なく,ジェムザール単独の治療でも化学放射線治療と同等の効果が期待されています。

 現在では,膵臓がんの抗がん剤治療においてはジェムザールだけの治療を行っている施設が増えています。

また,国立病院機構大阪医療センターではジェムザールを使う標準的治療の他に、ジェムザールとTS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)の単剤同士の比較や、併用療法の効果を調べる臨床試験を行っています。この臨床試験は全国の施設が参加する大規模なものです。

 TS-1は、ジェムザールが登場する以前に膵がんで使われていた5-FU(一般名フルオロウラシル)の成分をもとに、日本で開発された薬です

 現在,これまでの臨床試験の結果,ジェムザール単独よりも,TS-1との併用療法のほうが効果の大きいことが予想され,効果が期待されています。



分子標的治療薬
 現在,がん細胞の特異構造を標的としてはたらき,正常細胞への影響はないとする分子標的治療薬の研究が進んでいます。

 エルロチニブ(タルセバ)は2007年に承認された非小細胞肺がんの治療薬で作用メカニズムはイレッサと同様で,がんの増殖に関わるがん細胞の表面にあるEGFR(上皮増殖因子受容体)チロシンキナーゼを標的とし,そのはたらきを阻害します。

 副作用として,EGFRチロシンキナーゼ阻害薬で特徴的に現れるものに皮疹などの皮膚障害があります。イレッサでも発現しますが,発現率はタルセバのほうが高く,ほとんどの患者に見られます。

 また,イレッサ同様,間質性肺疾患も見られ,その副作用の発症率は国内の臨床試験では4.9%でした。 その他,下痢,口内炎などの副作用も見られます。

 タルセバは膵臓がんに対する臨床試験の結果,効果が得られたとして,中外製薬が2009年膵臓がんに対する効能・効果追加の承認申請を厚生労働省に行いましたが,臨床試験中のため保険の適用が受けられません。

 中外製薬によるタルセバの説明会において,国内フェーズ2試験で重大な副作用の間質性肺炎の発現率が8.5%(106例中9例)に上っており,かなり厳重な体制でやってく必要があると発表されています。


免疫細胞療法
 
手術もできない場合,免疫細胞療法も一つの選択肢ですが,そのなかでも活性化自己リンパ球療法は高度先進医療として8カ所の大学病院が指定を受け,実施しています。ここでは免疫療法は特別治療費として全額負担となりますが,診察や検査,入院費などは保険の適用を受けられます。

 免疫細胞療法の最大のメリットは副作用などがほとんど見られないということで,手術,放射線治療,抗がん剤治療と併用することもできます。

  また新しい免疫細胞療法の一つである樹状細胞療法に限れば東京女子医大病院,東北大学病院、福島県立医大病院,京都府立医科大病院などで臨床試験として実施されています。免疫細胞療法の実施病院に関してはがん治療の病院のページをご覧下さい。

 
   

         
    膵臓がん予防
 果物や野菜を豊富に摂取していると膵がんのリスクが50%軽減することが,米カルフォルニア大学の研究で明らかになりました。

 今回の研究結果は,膵がん患者532例および無作為化により抽出したサンフランシスコ地域の住民1700例以上を対象とした調査の結果で,膵臓がんの予防効果が強く認められたのは,タマネギ,ニンニク,マメ類,黄色野菜(ニンジン,ヤマイモ,サツマイモ,トウモロコシ,カボチャ),緑色野菜,アブラナ科野菜などです。

 果物にも予防効果が認められたものの,野菜ほどの効果はなく,果物の中で最も予防効果が優れていたのは柑橘類であるということです。

 こうした野菜や果物を1日に少なくとも5皿分摂取すると,2皿分以下摂取したグループよりも膵臓がんリスクが50%低く,9皿分摂取すると,5皿分以下摂取したグループより膵がんリスクが50%低いと報告されています。 

   
         
         
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