免疫細胞療法 がん免疫療法 

 免疫抑制のメカニズムが解明され,進化しつつある免疫細胞療法 

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免疫細胞療法とは

   

免疫細胞療法とは,がん免疫療法とも言われ,私たちの体に本来備わっている免疫機能を活性化させ,がん細胞を消滅させようというがん治療の一つです。

遺伝子の変異によるがん細胞は誰でも毎日数千個発生していると言われています。ところが多くの人ががんと呼ばれる病気にならないのは,変異を起こしたがん細胞に対して,リンパ球などの免疫細胞がはたらき,日々消滅させているからです。
 
このようなことを考えると,何らかの原因で免疫力低下が起こったり,あるいは免疫力が低下しないとしても,その人の持っている免疫力よりもがん細胞の増殖力のほうが強く,がんという病気になってしまうということが言えるでしょう。 

免疫細胞療法は患者自身の免疫細胞を増殖,活性化させることでがん細胞に対する攻撃力を高めようとする治療方法であり,副作用もほとんどなく,手術,放射線治療,抗がん剤治療の三大治療につぐ第四のがん治療法として近年注目されるようになってきました。


人体の免疫システムは複雑であり,いまだ解明されていないことも多く,がんに効果のあるNK(ナチュラル・キラー)細胞とT細胞の両方の性質を併せ持つNKT細胞やT細胞でありながら自然免疫の性質を持つ第2のT細胞と呼ばれるγδ(ガンマ・デルタ)T細胞も最近発見されたばかりです。
 
現在,免疫細胞療法はより効果的な治療法を求めて,様々な機関で研究が進められている発展途上の治療法,研究段階の治療法でもあります。

この治療法は,再発の予防の手だてとして,また,手術では切除が不可能な場合などの代替療法としても有効といわれています。

抗がん剤治療と比較して,患者のQOLを高く維持できるため,緩和医療としても有効であり,三大治療と併用してそれぞれの治療効果を高めることも可能です。
 

ただ,この免疫治療を軽視する人もいます。 「手術や抗がん剤,放射線治療でがんを治すのであって,免疫治療ではがんは治せない。」と主張する医師もいます。

しかし,下記に示した2007年のフランスの研究グループによるマウスを使った実験では,がん治療における免疫細胞の重要性を示すものとなりました。

この実験では,免疫不全を人工的に起こしたマウスと,そうでないマウス両方に大腸がんを移植し,その後抗がん剤治療を行い,腫瘍の大きさの変化を比較しました。

その結果,正常マウスでは抗がん剤の効果で腫瘍が抑制されましたが,免疫不全マウスでは抗がん剤投与にもかかわらず腫瘍が増大してしまったのです。

また,同様に,乳がんをマウスに移植後,放射線治療をおこないましたが,やはり免疫不全マウスの腫瘍は増大してしまったのです。

これは「抗がん剤治療や放射線治療などの標準治療といえど,免疫細胞の力を借りなければ効果がでない。」ということを示唆する実験結果です。




 
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進化する免疫細胞療法−進む個別化治療


1980年代にアメリカのローゼンバーグ博士ががん患者から摂取した免疫細胞を培養液で活性化,増殖させて体内へもどすという治療法が行われました。これが現在の免疫細胞療法の基礎ともいえるものです。

そして2010年代の現在では多くの機関,施設でこの免疫細胞療法の研究が行われ,その治療法も進化しています。

がん治療において,最近ではテーラーメード治療という考え方が普及してきました。これは,患者の体質は一人ひとり異なるため,患者の体質をよく見極め,その患者にあった治療法をおこなうという考え方です。

特に抗がん剤治療ではその薬剤に対する反応は一人ひとり異なるため,使用すべき薬剤の種類や適正量は患者をよくみて慎重に判断すべきと主張する医師も増えています。

免疫細胞療法においてもこの個別化治療が進んでいます。たとえば,同じがんの患者においてもがん細胞上にある分子であるMHCクラス1が発現している場合と発現していない場合があります。

前者は樹状細胞やCTL細胞(
細胞障害性 Tリンパ球)による治療が効果的であり,後者ではNK細胞やγδT細胞などによる治療が効果的です。

最近では免疫組織化学染色検査により,このMHCクラス1がどれだけ発現しているかが判明し,適切な治療法が選択できるようにもなりました。(瀬田クリニック

さらに,免疫細胞療法とは異なりますが,免疫療法の一種であるがんワクチン療法も普及しはじめ,手術をしてがん細胞を獲得できる場合は抗原として利用しますが,手術が不能な場合,人工抗原(がんペプチド)を利用できるようにもなり,よりきめ細かい治療が可能となってきたのです。

このようにがん患者のがんの種類に応じて適切な治療をおこなうことにより,免疫治療はより効果があがるように進化しつつあります。 


 
 
 
     

進化する免疫細胞療法
がん幹細胞を傷害できる免疫細胞


最近になり,がんにはがん幹細胞が存在することが,明らかになりました。これまでも各臓器には臓器をつくる様々な細胞に分化する能力を持ち,各臓器を維持している臓器幹細胞があることが知られていましたが,がんには存在するのか不明でした。

ところが,1994年に急性骨髄性白血病のがん細胞からこのがん幹細胞の存在が明らかとなり,これ以降,固形腫瘍でもがんの幹細胞が存在が次々と明らかになったのです。

このがん幹細胞は細胞分裂はほとんどしないという,いわば冬眠状態のため,細胞分裂時に作用する抗がん剤や放射線治療の影響を受けにくく,それ故,これらの治療でがんが死滅したように見えても,このがん幹細胞だけは生き残り,再発するのではないかと考えられるようになったのです。
 
最近の研究ではこのがん幹細胞に対して,免疫細胞のCTLもNK細胞も共に攻撃できるという研究結果が報告されています。

これまでも免疫細胞療法は放射線治療や抗がん剤治療とは併用することが可能で,これらとうまく組み合わせことで有効な治療法となりうるといわれてきました。

この研究報告により,これらの集学的治療では,抗がん剤や放射線治療で困難であったがん幹細胞を免疫細胞がたたき,周囲のがん細胞を抗がん剤や放射線がたたくということで,相互に補完し合い,有効な治療法となりうることが理論上証明されたことになります。

また,最近の研究では,「キラーT細胞」からiPS細胞を作る研究が成功し,腫瘍を傷害する活性度の高いT細胞の大量生産にも成功しています。

このように,免疫細胞療法の研究が進むことで,今後さらに治療成績も向上し,がん治療の一つの柱にになっていくと期待できます。

  
 
 
 
   

免疫細胞療法の種類と機能

   
免疫細胞療法で活かされる免疫細胞にはどのようなものがあり,日常はどのようにはたらいているのか説明します。

免疫細胞の中心となっているのは白血球で,幹細胞から分化したものです。白血球の95%は顆粒球とリンパ球で残る5%が単球とよばれるものです。

すなわち免疫を担当する白血球は顆粒球,リンパ球,単球に分けられ,さらにリンパ球はB細胞,T細胞,NK細胞,NKT細胞に分類されています。


現在,免疫細胞療法で活用されているものはNK細胞,T細胞,NKT細胞,樹状細胞です。


 免疫細胞の種

    顆粒球 

 白血球の60%を占め,強い殺菌作用を持ち,体内に侵入した細菌や異物などに対し,分解酵素と活性酸素で分解します。ただし,この顆粒球は直接がんには関わりません。顆粒球は好中球,好酸球,好塩基球の3種類に分けられますが好中球が90%以上を占めます。

    リンパ球 
白血球の35%を占め,ウィルスや細菌,そしてがん細胞をも殺すことができます。この中にNK(ナチュラルキラー)細胞,B細胞,T細胞,NKT細胞などの種類があります。
 
 
リンパ球系
免疫細胞
 特徴
NK細胞
 異常な細胞を攻撃します。がん細胞,老化細胞,ウィルス感染細胞などにパーフォリン,グランザイムなどの攻撃物質を放出して破壊します。

 NK細胞は,T細胞と異なり,がん細胞の目印となるMHC分子を発現していないがん細胞を直接攻撃・殺傷することができます。
B細胞

 B細胞はT細胞の1種ヘルパーT細胞の指示に基づいて抗体を作ります。この抗体がウィルスや細菌と結合し,それらを無力化したり,マクロファージに捕食されやすくします。

 また,いったん病原体が姿を消しても,それに適合したB細胞の一部は記憶細胞として長く残り,次回の侵入の際に素早く抗体産生が開始できるようになっています。

T細胞


 T細胞はキラーT細胞,ヘルパーT細胞,サプレッサーT細胞の3タイプに機能がわかれます。

 ヘルパーT細胞は細菌などを捕食したマクロファージや樹状細胞の抗原提示を受け,キラーT細胞やB細胞に指令を出します。指示を受けたB細胞は抗体を作り,キラーT細胞はがん細胞やウィルスにとりつき破壊します。

 ただしキラーT細胞が攻撃できるのはがん細胞の目印となる MHC分子を発現しているがん細胞に限られます。またサプレッサーT細胞は免疫反応を必要に応じて終了に導くはたらきがあります。
NKT細胞

 NKT細胞はNK細胞とT細胞の両方の性質を持ったリンパ球です。NKT細胞は,他のリンパ球に比べ非常に少なく,体内に0.01%しか存在しません。

 しかし,NKT細胞は,NK細胞と同様にがん細胞の目印となる MHC分子を発現していないがん細胞を直接攻撃・殺傷することができるので,がん治療のためには効果を発揮する細胞です。

 またがん細胞の攻撃だけでなく他のリンパ球を活性化したり,自らの身体を過剰攻撃する自己免疫病を抑制するはたらきもあります。
単球系
免疫細胞
特徴
単球
 単球は白血球のうち5%を占めます。アメーバ運動を行って移動することができ,細菌などの異物を細胞内に取り込み,細胞内酵素を使って消化することができます。

 その後,断片化した異物を細胞表面に提示し,これをヘルパーT細胞に認識させます。こうして免疫反応が開始されます。
マクロファージ
 単球は組織に移行し,マクロファージや樹状細胞になどに分化しますが,マクロファージは貪食(どんしょく)細胞とも呼ばれ,体内の異物を自分の中に取り込んで消化します。

 また異物の一部を抗原提示し,ヘルパーT細胞へ伝えます。
樹状細胞
 樹状細胞は体内に侵入した細菌やウイルス,がん細胞などの異常な細胞をいち早く認識します。

 その後,自らの細胞のまわりに抗原を提示しヘルパーT細胞へ伝える役割をします。
 
 
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免疫細胞療法の実際

   
免疫細胞療法には免疫活性化物質を直接患者に投与する方法もありますが,患者から血液を採取し,有効なリンパ球を抽出し,それらを培養液で活性化・増殖した後,点滴で体内に戻すという方法が一般的です。

免疫細胞療法にはがん細胞の特徴を免疫細胞に認識させないで,活性化・増殖させる方法と,免疫細胞にその特徴を認識させて用いる方法とがあり,前者を非特異的免疫細胞療法,後者を特異的免疫細胞療法よび,区別することができます。

人間のからだには,ウイルスなど病原体が侵入したときに4時間以内に反応する自然免疫と,少し時間がたってから反応する適応免疫の2種類があります。

この2つの免疫でははたらくリンパ球の種類が異なります。自然免疫ではNK細胞,マクロファージ,樹状細胞,好中球が,適応免疫にはT細胞,B細胞がはたらきます。 

ウィルスやがん細胞などの特徴を樹状細胞からの情報として認識し,増殖するのがT細胞などの適応免疫細胞であり,そのような情報にたよらずに病原体を殺すのがNK細胞などの自然免疫細胞といえます。


最近の研究では,同じT細胞でもαβT細胞とγδT細胞にわけることができ,血中のTリンパ球は大半がαβT細胞ですが,γδ型受容体をもつγδT細胞も数%の割合で存在することがわかってきました。

さらに,これまで,T細胞は抗原情報が伝えられないと攻撃できないと考えられてきましたが,このγδ型T細胞は抗原を樹状細胞などにより提示されなくとも,腫瘍を攻撃できるNK細胞同様の自然免疫を持つということがわかり,この細胞を増殖させて治療する施設もあります。
 
活性化自己リンパ球療法(αβT細胞療法)
1.採血 2.培養 3.投与
患者から血液を採取した
後,リンパ球を遠心分離
抗CD3抗体入りの培養液に
インターロイキン2(IL-2)と
患者から採取したリンパ球を
加え培養し,リンパ球を活性
化,増殖させる。
遠心分離,洗浄により活
性化したリンパ球を取り
出し,生理食塩水と共に
点滴で患者に投与する。
  
 
 

  がん免疫細胞療法の種類
  非特異的免疫細胞療法     

サイトカイン療法
サイトカインとは免疫に関係する細胞が放出する物質で,免疫細胞の活性化,増殖を促すはたらきがあります。サイトカインには,インターロイキン2,インターロイキン12,インターフェロン(IFN),腫瘍壊死因子(TNF)などがあり,点滴で投与します。

特にTNFについては,特に慢性骨髄性白血病に対して有効であり,その治療薬として注目されています。しかしこれらは,むくみや発熱など副作用も強いので副作用を避けるため,局所への投与が行われる場合もあります。



LAK療法=Lymphokine−activated Killer cells (リンパ球活性化キラー細胞)療法
1980年代にアメリカのローゼンバーグ博士が開発した治療法で,現在の様々な免疫細胞療法の母体となっています。患者のリンパ球を大量に摂取し,インターロイキン2で活性化させ,それらをインターロイキン2とともに患者の体内に戻す治療法です。
 
この方法で増加するリンパ球はNK細胞が中心ですが,リンパ球の大量摂取やインターロイキン2の直接投与が患者の負担となることもあり,現在はLAK療法と呼ばれていても,このままの方法で行われているところはなく,多くが後述のCD3−LAK療法で行われています。 




NK細胞療法Natural Killer cells(ナチュラルキラー細胞)療法
がん細胞を直接攻撃できるNK細胞を患者の血液から抽出し,インターロイキン2を与え,培養し,数を増やして患者の体内に戻す治療方法です。
 
現在このNK療法も進化しており,従来は数十倍にしか増やせなっかたNK細胞を1000倍に増やす技術も出てきています。

さらに従来の方法ではがん細胞にNK細胞が集中しにくいということもありましたが,がん細胞が作り出す物質に反応する受容体を持ったNK細胞の培養にも成功し,より効率的にがん細胞へ誘導させることが可能になっています。
  
実施機関 瀬田クリニック  日比谷内幸町クリニック   タカラクリニック    起生会 吉田病院    新大阪免疫クリニック
      博多駅前クリニック   内藤メディカルクリニック   ニューシティ大崎クリニック
 



CAT療法CD3ActivatedTcells(CD3活性化T細胞)療法(CD3LAK療法)(αβT細胞療法)
現在最も一般的に行われている方法です。がん細胞を攻撃するT細胞に,抗CD3抗体(T細胞のCD3分子を刺激する抗体)を与え,活性化させ,インターロイキン2を与え,増殖させる治療法です。細胞1個あたりの能力は後述のCTL療法ほど強くはありませんが,大量増殖が可能です。

このT細胞の中でがん細胞を殺傷する中心となっているものが,αβ型の細胞レセプターを発現しているCD8陽性T細胞です。この細胞は腫瘍効果を持つサイトカインも産生します。

またこの治療法では細胞障害性T細胞が中心となりますが,免疫細胞を活性化させるヘルパーT細胞の活性化やNK細胞の活性化もできます。
  実施機関 瀬田クリニック  東京女子医大東医療センター  白山通りクリニック  ビオセラクリニック   東海クリニック   
         新大阪がん免疫治療クリニック   CSクリニック   起生会 吉田病院   タカラクリニック   



同種リンパ球療法
同種リンパ球とは他人のリンパ球のことであり,すなわち他人のリンパ球を患者に投与することで,患者自身のリンパ球を刺激し,リンパ球の殺傷能力を高めようとする治療法です。

すなわち,他人のリンパ球を投与するといってもがんを攻撃するのは他人のリンパ球でではなく,あくまで患者のリンパ球です。

すでに1972年にはハーバード大学の研究室でマウスの実験から,同種マウスリンパ球を注射するよりも,他の動物の異種リンパ球を注射した方が効果があり,人間の場合も同様で,本人のものより他人のリンパ球を注射した方が抗がん作用が大きいと発表されています。

この治療法の中心はNK細胞と考えられ,樹状細胞などからの抗原提示なしにがん細胞を攻撃する非特異的な免疫細胞療法の1種です。

がんに対する殺傷能力は個体で見るとNK細胞の方がT細胞より大きいと言われています。この治療法のメリットは,他人のリンパ球を使用するため,患者から血液を採取する必要がないということです。

通常免疫細胞療法のための血液採取量は20cc〜40cc程度であり,それほど負担ではありませんが,末期患者ではそれすら負担になります。

しかし,他人のリンパ球投与は,ウイルス感染の危険性もあるので注意が必要です。


  特異的免疫細胞療法     

CTL療法=Cytotoxic T Lymphocytes(細胞障害性 Tリンパ球)療法
がん細胞を攻撃できるT細胞を患者の血液から抽出し,患者自身のがん細胞やがん抗原たんぱく質を加えることで,がん抗原をT細胞に学習させ,抗CD3抗体で活性化した後にインターロイキン2で培養し,細胞障害性を持った大量のTリンパ球を患者の体内に戻す方法です。

このCTL療法は自己のがんから抽出した抗原を使う方法(T−CTL)と人工の抗原を使った方法(P−CTL)の2つの方法がありますが,自己のがん抗原を使った方が,より効果があると言われています。

このT−CTL療法では,手術で比較的大きな腫瘍が摘出され,抗原の抽出に成功した場合に限られます。またT−CTL療法も,P−CTL療法もMHC分子抗原を提示していないがん細胞は攻撃できないという欠点もあります。

多発性肝がんの,手術でとりきれなかった腫瘍に対する臨床試験では,腫瘍縮小効果は約30%でした。しかしこれは腫瘍の大きさが3cmまでで,大きな腫瘍に対しては増殖は抑えても,50%以上縮小した例はなかったということです。
  実施機関 瀬田クリニック 新大阪がん免疫治療クリニック  タカラクリニック   


TIL療法=Tumor Infiltating Lymphocytes(腫瘍組織浸潤リンパ球)療法
腫瘍の中から採取したリンパ球には,すでに抗原提示を受け,活性化しているT細胞も集まっています。そこでがん腫瘍そのものに集まっているリンパ球を摂取し,インターロイキン2とともに培養し,患者に投与するという治療法です。

ただ,腫瘍組織からリンパ球を回収する方法が煩雑であり,長期間培養が腫瘍への集積性を低下させるなどの問題点もあります。したがってTIL細胞をがん細胞と共に培養したり,ある種の抗体を用いて腫瘍に強く集積するような方法も試みられています

アメリカで行われた臨床試験では,転移性の悪性黒色腫や転移性の腎臓がんで有効性が示されたとの事です。また,特にがん性の胸水・腹水のコントロールに期待できます。
  実施機関 新大阪がん免疫治療クリニック   


DC療法(樹状細胞療法)
T細胞が活性化しがん細胞を攻撃できるキラーT細胞となるためには樹状細胞などの抗原提示細胞によって刺激される必要があります。

樹状細胞は1個の樹状細胞で数百から数千のリンパ球の刺激が可能であり,効率的ですが,樹状細胞の数は白血球の0.1〜0.5%程度しかありません。そこでこのDC療法では,血液中に樹状細胞よりも数多く存在する単球という免疫細胞を成分分離採血法で大量に獲得し,さらに薬剤により,これらを樹状細胞に分化させる新しい技術を使っています。
 

DC療法には手術で摘出した自己の腫瘍からの抗原や人工の抗原を樹状細胞と混ぜ合わせることで,T細胞を活性化しやすい樹状細胞にして体内に戻すDCワクチン療法と,患者からの樹状細胞を大量に培養するのみで体内に戻すDCI療法とがあります。とくにDCI療法は手術のできない患者にも可能です。

このDC(樹状細胞)療法は,さらに樹状細胞に効率良く抗原提示を行わせるため,CHP(疎水化多糖類)複合型ワクチンというものが開発されました。これはHER2などのがん抗原タンパクを糖類の一種であるプルランというものでくるんだ合成ワクチンです。

動物を使った実験ではこのCHPワクチンを注射すると,樹状細胞などの抗原提示細胞に効率よくがん抗原が取り込まれ,その結果がん抗原情報が効率よく提示され,がん細胞を攻撃するキラーT細胞が飛躍的に増殖することがわかっています。

現在,この臨床試験が三重大学を中心として乳がん,食道がん,肺がん患者に対し行われていますが,臨床試験なので参加するには様々な条件があります。

また,民間の医療研究機関の(株)メディネットが,樹状細胞に抗原を効率よく取り込ませる技術(Cell Loding System)やゾレドロン酸感作によるCTL誘導技術を開発し,瀬田クリニックなどの医療機関に技術提供しています。
  実施機関 瀬田クリニック  タカラクリニック  新大阪がん免疫治療クリニック  九段クリニック  博多駅前クリニック   
         日比谷内幸町クリニック   



    非特異・特異併用免疫細胞療法   

CTL+NKT療法
第四のリンパ球と呼ばれ,近年その働きが解明されたNKT細胞を活用した新しい治療方法です。従来のCTL療法はがん抗原をT細胞に認識させ,がんに対する攻撃力を持たせ,体内に戻す治療法ですが,がんのMHC抗原分子を標的にしているため,MHC抗原分子というものを失ったがんは認識できず殺すことはできませんでした。

ところがNKT細胞はMHC抗原分子を失ったがん細胞のみを攻撃できるのです。 すなわち,このNKT細胞はNK細胞と同じように,樹状細胞などから,がん細胞の抗原提示を受けなくとも,すぐに攻撃できるという自然免疫系の性質を持っています。

それだけでなく,NKT細胞から分泌されたサイトカイン(インターフェロンγ)が,同じ自然免疫系の他の細胞NK細胞や獲得免疫系のT細胞を活性化できることが解明されています。

すなわち,このNKT細胞をうまく増殖させることができれば,自然免疫系と獲得免疫系2種類のタイプの免疫細胞を活性化でき,きわめて効率的に免疫力を強化できます。

さらにこのNKT細胞のがん細胞に対する殺傷能力はNK細胞よりも強いということもわかってきました。まだ,臨床試験の段階ですが,今までにない高い効果が期待できるがん治療法です。


すなわちこのT細胞とNKT細胞の2種類の免疫細胞を活性化させることで,お互いの欠点を補い,より強力な免疫力を発揮できる最新のがん治療法で,現在,千葉大学医学部でこの治療法の臨床試験が行われています。
  実施機関  千葉大学医学部附属病院呼吸器外科  九段クリニック(NK+NKT療法)   


γδT細胞療法・BAK療法=BRM Activated Killer(生物製剤活性化キラー)療法療法
γδT細胞はリンパ球の中に数%しか存在しませんが,このγδT細胞はNK細胞と同様に,樹状細胞からの抗原提示を受けなくとも,がん細胞を認識し,がん細胞を殺傷します。 さらに自ら抗腫瘍効果を持つ,INF−γやTNF−αなどのサイトカインを産生することができます。また,このγδT細胞は加齢とともに大幅に減少するリンパ球です。

このγδT細胞療法は,がんの種類や病状によってはαβT細胞療法よりも治療効果が期待できる
新しい治療法です。

この治療では末梢液中に含まれるγδT細胞を,アミノビスフォスフォネート製剤の一種であるゾレドロン酸とIL−2で培養し,選択的に活性化,増殖させて患者の体内に戻すことによって行われます。

しかし,γδT細胞は数が非常に少ないため,
γδT細胞を十分な量まで培養するにはαβT細胞療法の3倍程度の血液を採取する必要があります。

 この新しい治療法は瀬田クリニックグループで受けることができます。


また,宮城県立がんセンターの研究所の海老名 卓三郎博士は,がん細胞を直接攻撃できるNK細胞の半分に含まれるCD56陽性リンパ球の他にγδ(ガンマ,デルタ)T細胞を患者の血液から抽出し,2週間ほど培養し,数を増やして患者の体内に戻す治療方法を開発しました。

海老名博士は末期癌患者17名と術後転移巣が見つかっていない4名に外来で月1回投与する臨床試験を行いました。その結果は17名全員が1年以上延命し,QOLの低下も見られませんでした。

臨床効果は,完全寛解2名,部分寛解 1名,長期不変は10名でした。術後転移予防のためにBAK療法を行った患者4名は現在まで2年以上全員再発はないとのことです。
  実施機関  瀬田クリニック  共生医学研究所   



 
   

免疫細胞療法と三大治療

   
手術,放射線,抗がん剤による治療方法は三大療法と呼ばれ,現在がん治療の主流ですが,治療の苦痛や免疫力低下の問題もあります。免疫細胞療法はこれらのどの治療法とも併用でき,かつその効果を高めることができます。


  手術によるがん治療

現在,がん治療において最も多く行われている治療方法です。がん細胞そのものを摘出するのですから,確実な方法と言え,腫瘍の範囲が限局している場合は完治する可能性の高い治療法です。

現在がん治療で,最も多く行われている治療方法です。がん細胞そのものを摘出するのですから,確実な方法で,腫瘍の範囲が限局している場合は完治する可能性の高い治療法です。

しかし,手術時にすでに細胞レベルでの転移が起きてしまっていることが多く,そこから再発してしまうケースも少なからずあります。したがって手術では再発予防の見地から原発巣よりも広範囲での摘出が行われることが多く,そこから受ける体のダメージやQOLの低下も問題です。
 
また手術ではでがん細胞を攻撃するリンパ球は減り,免疫力が低下します。特にリンパ節を摘出するリンパ節廓清はリンパ球の集まっている場所が無くなるわけですから免疫力低下が起きてしまい,予後が悪くなるケースもあります。 

免疫療法は,正常細胞に与えるダメージがなく,手術ができない場合や術後の補助療法として期待されています。

特に手術では,目に見えないがん細胞が拡がっていることも多く,これらを完全に切除することは難しく,再発もしばしば見られます。

この術後の再発防止は免疫細胞療法の最も適しているところでもあり,肺がんや肝臓がんなど術後に免疫細胞療法を行うと,再発率や死亡率が低下するということは,多くの学会でデータとして報告されています。
 

  放射線によるがん治療

放射線によるがん治療の問題点として免疫抑制があります。 特にがん細胞攻撃に有効なリンパ球は放射線に対して感受性が非常に高く,わずか1グレイ(Gy)の放射線量でも運動能力の低下,形態の変化,細胞数の減少が見られます。

しかし,放射線療法は,治療機器の進歩により,ピンポイント照射が可能になり,リンパ球などの正常細胞への影響を減らすことに成功しています。(放射線治療のページ参照)

最近の研究により,がん細胞に放射線照射をすることにより,免疫細胞が攻撃しやすくなるという放射線療法と免疫細胞療法の併用による効果が報告されています。

放射線治療のがん細胞殺傷効果は,放射線単独によるものではなく,免疫細胞がそのはたらきを助けています。 放射線照射でがん細胞は死滅しますが,すべて殺傷できるわけではなく,まだ生き残っているがん細胞もあります。このようながん細胞を免疫細胞が取り巻き,これらを死滅させているのです。

がん細胞はもともと正常細胞から変化したものなので,免疫細胞ががん細胞を認識できないことも多いのですが,放射線を照射されることで,免疫細胞ががん細胞を異常な細胞と認識し,攻撃しやすくなります。
 
さらに,放射線により,がん細胞の数が減らされたことで,免疫細胞が数的にも有利になり,効果を上げることができるのです。

免疫細胞療法と放射線治療を併用することで,放射線治療で殺傷できなかったがん細胞を殺せるだけでなく,放射線治療による免疫力低下を防ぐことができ,このような治療法は今後発展するであろうと考えられます。


抗がん剤はいくつかの種類がありますが,基本的には細胞の分裂・再生を阻害する薬剤です。がん細胞は際限なく,分裂・増殖を繰り返す細胞なので確かに有効ですが,ここで問題になることはリンパ球をはじめ,正常細胞の分裂・再生をも阻害し,体にダメージを与えてしまうことです。
 
再発したがんには当初のがん治療で使用されたものと同じ抗がん剤は使えないとされています。それはがん細胞がその抗がん剤に耐性を持ってしまうからです。ところががん細胞の中にはいずれの薬剤にも耐性を持ってしまうものもあり,こうなると抗がん剤のみでは手の施しようがなくなります。

また,抗がん剤の副作用も患者の大きな負担となります。正常細胞が受けたダメージにより,貧血,嘔吐,食欲不振,脱毛,黄疸,倦怠感など様々な副作用がおこります。
 
抗がん剤治療の問題点は副作用の他にも骨髄抑制という免疫力低下があるという点です。免疫力低下を防ぐG−CSF製剤を投与しても,この薬剤は白血球のなかでも,細菌感染などに効果のある顆粒球を増加させることはできても,がん細胞に対して効果のあるリンパ球を増加させることはできず,がん細胞に対する免疫力低下の問題から逃れることはできません。

免疫細胞療法はこのような抗がん剤による免疫力低下を補うという意味で,とても有効です。ただし,一般的な投与量,すなわち人体が副作用に耐えられる限界量まで投与してしまうと,免疫細胞療法の効果まで薄れてしまうため,抗がん剤の投与量を減らす必要があります。

近年の研究により,少量の抗がん剤と免疫療法の組合せががん治療で大きな効果を上げるということがわかってきました。
 
あらかじめ少量の抗がん剤を使ってがん細胞を少し弱めておくと,がん細胞表面にあるTRAILと呼ばれる受容体の抵抗性がなくなるため,この受容体に免疫細胞がはたらくことでがん細胞を死滅しやすくできるということです。

この方法はまだ新しいがん治療法ですが,臨床例が増加し,効果が立証できれば,抗がん剤の副作用も少ないため今後も普及していくと思われます。。



  抗がん剤によるがん治療

抗がん剤はいくつかの種類がありますが,基本的には細胞の分裂・再生を阻害する薬剤です。がん細胞は際限なく,分裂・増殖を繰り返す細胞なので確かに有効ですが,ここで問題になることはリンパ球をはじめ,正常細胞の分裂・再生をも阻害し,体にダメージを与えてしまうことです。
 
再発したがんには当初のがん治療で使用されたものと同じ抗がん剤は使えないとされています。それはがん細胞がその抗がん剤に耐性を持ってしまうからです。ところががん細胞の中にはいずれの薬剤にも耐性を持ってしまうものもあり,こうなると抗がん剤のみでは手の施しようがなくなります。

また,抗がん剤の副作用も患者の大きな負担となります。正常細胞が受けたダメージにより,貧血,嘔吐,食欲不振,脱毛,黄疸,倦怠感など様々な副作用がおこります。
 
抗がん剤治療の問題点は副作用の他にも骨髄抑制という免疫力低下があるという点です。免疫力低下を防ぐG−CSF製剤を投与しても,この薬剤は白血球のなかでも,細菌感染などに効果のある顆粒球を増加させることはできても,がん細胞に対して効果のあるリンパ球を増加させることはできず,がん細胞に対する免疫力低下の問題から逃れることはできません。

免疫細胞療法はこのような抗がん剤による免疫力低下を補うという意味で,とても有効です。ただし,一般的な投与量,すなわち人体が副作用に耐えられる限界量まで投与してしまうと,免疫細胞療法の効果まで薄れてしまうため,抗がん剤の投与量を減らす必要があります。

近年の研究により,少量の抗がん剤と免疫療法の組合せががん治療で大きな効果を上げるということがわかってきました。
 
あらかじめ少量の抗がん剤を使ってがん細胞を少し弱めておくと,がん細胞表面にあるTRAILと呼ばれる受容体の抵抗性がなくなるため,この受容体に免疫細胞がはたらくことでがん細胞を死滅しやすくできるということです。

この方法はまだ新しいがん治療法ですが,臨床例が増加し,効果が立証できれば,抗がん剤の副作用も少ないため今後も普及していくと思われます。



  免疫細胞療法の奏効率
 
抗がん剤の場合,がんが完全に消失したと判断された状態が4週間以上続いた場合を「完全寛解」,がんの断面積が半分以下または最長径で7割に縮小した状態が4週間以上続いた場合を「部分寛解」として,抗がん剤治療が奏効したと判断しています。

このような評価は抗がん剤治療のページでも紹介したように,患者の望む延命とは必ずしも一致せず,4週間後の腫瘍の増大というリバウンド現象は抗がん剤投与ではよく見られます。

免疫細胞療法では,がんの大きさが大きくも小さくもならない状態すなわち[不変」が占める割合が多いことが特徴とも言えます。

民間の免疫細胞療法のパイオニアでもある瀬田クリニックの報告によると,1999年から2004年までに治療を受けた患者は2055例で,この中で治療効果の測定が可能だったのは835例ありました。

その内わけは,「完全寛解」が8例,「部分寛解」が120例,がんの大きさが断面積で半分以下にはならなかったもののその状態が3ヶ月以上(抗がん剤の場合は4週間以上)変化しなかった「不変」が270例,同じく6カ月以上変化しなかった例「長期不変」が72例,という結果でした。

抗がん剤と同様の基準で言えば「奏効率」は「完全寛解」十「部分寛解」で全体の15%となります。しかし,免疫細胞療法では,抗がん剤のような強い副作用がなく,QOLを下げることなく維持でき,「長期不変」についても十分に意味のある効果と考えられます。

したがって,この「長期不変」を加えると,「完全寛解」+「部分寛解」十「長期不変」で全体の24%が有効であったと判断され,これを「有効率」と呼んでいます。

このデータの対象が,がんの進行度がステージWに当たる進行がんや再発がんの患者が大半であることを考えると24%という有効率は低いとはいえず,多くの抗がん剤治療が副作用に苦しみ,その毒性のための身体の衰弱等を考えると,がんと共存しながらも,高いQOLを維持でき,元気に過ごせる免疫細胞療法はもっと評価されるべき治療法と言えます。




  免疫細胞療法のメリットと課題

  
免疫療法のメリット

以上述べてきたように,がんの三大療法には患者への負担やQOLの低下などがありますが,副作用も少なく,患者への負担の軽いことが免疫療法のメリットと言えます。

副作用はまれであり,起きるとしても,全体の10%の患者に微熱や倦怠感が見られる程度で,抗がん剤などと比較するとQOLははるかに高いレベルで維持できます。

同じように免疫細胞を活性化させるといわれるキノコなどに代表される食品群は吸収率や効果などが患者の体質にも大きく左右されます。

最近の研究によると,アガリクスなどのサプリメントは一時的に免疫力を高めても,服用を開始してから,3ヶ月程度でリンパ球が機能しなくなる免疫枯渇現象が見られるという報告もあります。

これに対し免疫細胞療法は免疫細胞を活性物質で直接活性化・増殖させるわけですから,免疫細胞を強化する確実な方法と言えます。

手術,放射線,抗がん剤治療はどれも免疫力を下げてしまいますが,免疫細胞療法はこれらの治療と併用することも可能であり,免疫力を保つことで,これらの治療法の欠点を補い,転移や再発の予防にも役立ちます。

また,手術が困難だったり,腫瘍をとりきれなかった場合など,緩和医療の一つとして有効であると考えられます。 特に,NK細胞などの免疫細胞を増やすと,それらの細胞が沈静・鎮痛作用のあるホルモンも分泌するため,がんの痛みが緩和されるという報告もあります。

免疫細胞療法で免疫力とがんの増殖力が拮抗する場合もありますが,その結果,がんを消滅させることはできなくても,がん細胞は増殖できず,共存という形で延命効果が期待できます。


 免疫細胞療法Q&A
現在,抗がん剤治療を受けていますが,併用してこの治療法を受けられますか。
可能です。抗がん剤治療の副作用としてリンパ球をも殺傷してしまい,免疫力低下を招きます。このような抗がん剤による免疫力低下を補うという効果を考えても,抗がん剤との併用は有効であると考えられます。

ただし,現在,一般的な基準量となる,副作用に耐えられる最大限の抗がん剤量の使用は,リンパ球の力を弱めてしまうことにもなります。したがって,抗がん剤投与の量を通常より控えめにすることや,投与のタイミングを抗がん剤とずらすことが必要になってきます。

また,放射線治療や手術との併用も可能ですが,いずれの場合も主治医との連携や協力が必要になり,医師によっては,このような治療を認めないケースもあるので確認しておくことも必要です。

免疫細胞療法を実施するクリニックとも相談してください。主治医と連絡をとってくれる場合もあります。

副作用などはありませんか
副作用がないことはありませんが,多くの場合,副作用は見られません。見られたとしてもほとんどが,10%の患者に微熱が見られる程度で,多くが数時間以内で平熱にもどります。
 
免疫細胞療法はこのように抗がん剤のような副作用が見られない患者に優しい治療法であると言えます。

費用はどれくらいかかるのでしょうか。
免疫細胞療法は,現在公的に保険の適用は受けられず,自費治療となります。
費用は医療機関や治療法の種類よっても異なりますが,1回の治療費は20万〜30万程度で,通常6回程度を1コースとして行われることが多く,目安としては120万円〜240万円程度です。

高度先進医療としてこの治療法はまだ標準がん治療としては確立していないため,現在公的な保険の適用はできませんが,保険会社の保険を適用できる場合もあります。(次項参照)

高度先進医療として免疫細胞療法を行うことを認可された医療機関では,診察,検査などは保険の適用となり,民間よりは少ない費用ですが,免疫療法に直接関わる治療は自己負担となります。

民間の損害保険などで利用できるものはありませんか。
先進医療を承認された大学病院などで免疫療法を受ける場合は,その先進医療特約の適用を受けられる保険もありますので,詳しくは保険会社にお問い合わせください。

民間のクリニックなどでは,特定承認保健医療機関には当たらず,先進医療特約の適用にはなりません。

しかし,民間のクリニックでもセコム損害保険株式会社の「メディコム」という保険は,保険会社負担で自由診療の免疫細胞療法を受けられますので,お問い合わせください。

どのようながんに適応できるのでしょうか。
ほとんどのがんに適応できます。また,どのような病期でも治療の対象になりますが,患者の状態が良好な時にはじめたほうが良い結果が得られています。

また,脳腫瘍に関しても,脳関門があるといっても,病巣部の脳関門は正常に機能しているわけではないので,リンパ球の移動も可能であり,効果があると考えてよいでしょう。

ただし,脳腫瘍は手術や,ガンマナイフ,サイバーナイフなどの放射線治療でも良好な成績を収めており,免疫細胞療法はこれらを補助し,効果を高める治療法として利用したほうがよいでしょう。

例外として,白血病などは,免疫細胞であるT細胞ががん化しているため,治療の対象外となり,HIV陽性の患者も培養が困難なため,対象外となります。

 現在,入院中なのですが,免疫細胞療法を受けられますか。
多くの治療機関では,入院中でも通院できれば治療は可能です。

入院していて,通院が困難な場合でも,病院の協力が可能なら,入院している病院で血液を採取し,ご家族の方などが免疫細胞療法を受ける病院へ運び,培養した後,リンパ球を入院している病院で患者に戻すということも可能です。

また,この治療をを適確に実施するためにも,患者のデータは必要であり,できれば主治医に紹介状を書いてもらい,診断データをもらったほうがよいでしょう。ただ,紹介状がなくとも治療は可能です。

 現在,免疫力を高める健康食品を摂取していますが,治療を受けられますか。
免疫細胞療法を受ける方はアガリクスなどの健康食品を利用している場合も多く,併用しても問題になることはほとんどありません。

しかし,自然食品であるからといって安全とは限らず,治療に影響を与える場合もありますので,主治医や看護師などに服用の事実を伝えるようにしましょう。

 手術を受けた後の再発予防には有効ですか
手術で腫瘍を切除できたとしても,それはあくまで目に見える範囲のことであり,微少ながん細胞は残存し,後日再発するということはよくあることです。

この治療は再発予防には適した治療法と考えられます。それは目に見えないがん細胞でも免疫細胞が発見,殺傷してくれますし,手術でがん細胞の大部分が切除されているため,がん細胞に対し,数的にも有利になるので,効果を発揮しやすいと考えられるからです。

この治療により再発が100%防げるわけではありませんが,肝臓がんや肺がんではその有効性を証明した論文もあります。


  丸山ワクチンについて     

丸山ワクチンは免疫細胞を活性化するという効果があり,非特異的免疫療法と呼ばれるがん免疫療法の1種と考えられます。
 
丸山ワクチンは日本医科大名誉教授だった故丸山千里博士がハンセン病患者や結核患者にがん患者がほとんどいないことからヒントを得て開発したものです。

丸山ワクチンは結核菌から抽出したアラビノマンナンという多糖類が主成分の免疫賦活剤です。丸山ワクチンには2種類の作用があります。一つは免疫力を強化し,がん細胞を殺す作用です。

すなわち,ワクチンの投与により,インターフェロンなどのサイトカインを体内で産生させることで,NK細胞などのリンパ球が活性化し,がん細胞を攻撃することができます。

もう一つの作用としては,コラーゲンの増殖作用があります。ワクチンの注射によって,多量のコラーゲンががん細胞の周囲に作られ,がんの増殖,転移を防止します。
 
このように丸山ワクチンに関してはがん細胞を殺す優れたメカニズムと一定の成果を上げているにも関わらず,厚生労働省から認可されていません。
 
この丸山ワクチンはSSM(Specific Substance Maruyama)という名称が用いられています。このワクチンはある程度の実績があり,免疫細胞療法ほど高額ではないというメリットもあります。 日本医科大学付属病院で治療が可能で,同病院が公開している下図の実績例を参考にしてください


SSMの治療実績
1964年から2002年3月末日現在までに,ワクチンの治験は国公立の病院をはじめ全国の病・医院で実施され,SSMの投与を受けた患者さんの総数は約35万6000人に上る。

図は手術でガンを取りきれなかった患者さん126名を対象に,抗ガン剤のみの治療(Aグループ)と抗ガン剤とSSMの併用治療(Bグループ)の2群に分けて生存率を調べたものである。治療を開始して50カ月の生存率は,ワクチンを併用したグループは、抗ガン剤のみのグループより15.2%高く、これはワクチンを併用すれば1000人あたり152人の割合で延命効果があることを意味している。


胃ガン非治癒切除症例の生存曲線(Kaplan-Meier法)-解析II-
胃ガン非治癒切除症例の生存曲線
「基礎と臨床」Vol.17 No1 Jan '83より
  

入手先
 丸山ワクチン・オフィシャルサイト         日本医大付属病院              
 日本医科大学付属病院ワクチン療法 

 丸山ワクチン患者・家族の会                          
 研究施設 
  丸山ワクチンで治療する病院                  
 
 
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