- 皮膚のえくぼ症状,ひきつれがないか。
- 乳頭は陥没していないか,乳首の向きに変化はないか。
- 両乳頭の高さの差はないか。
- 乳頭と乳輪部の湿疹・ただれ・びらんがみられないか。
- 皮膚のあかみ・オレンジの皮症状がみられないか。
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(2)触診 |
- 検診する側の腕は,ひじを曲げ,わきを少し開いた状態にして調べます。
- 調べる側の肩の下にクッションを入れ,乳首が乳房の中央にくるように調節します。これは乳首を中心に全方向を調べるためです。
- 触診は,人差し指,中指,薬指の腹の部分を使って,軽く伸ばしてそろえ,その指腹で軽く押さえながらおこないます。
(指先を立てず,指でつままず,ゆっくりと)
- 触診には脇の下から内側に向かって上下になでつける上下法,乳首を中心に放射状になでつける放射状法,鎖骨の下あたりから乳首に向かって小さな円を描きながら乳房の周囲をまわる回転法がありますが,いずれの場合でも指を離さずゆっくりと隙間なく触診することが大切です。
- 乳房の周囲から乳頭に向けて絞るようにつまみ,分泌液がないか調べましょう。特に血液が混じる場合は要注意です。
- リンパ節が腫れていないか,わきの下に指先を差し入れて調べましょう。
■ 乳がんの検診
乳がんの検診は触診の他,超音波検査,MRI検査,CT検査などがありますが,最も一般的な検査はマンモグラフィーです。
これは乳房のX線検査で,専用の装置で乳房全体を圧迫し,上下,左右方向から撮影を行うもので,触診では分からない微細な病変も発見でき,早期発見の有効な方法と言えます。
また最終的に乳がんと判定するためには,細胞診が必要で,しこりに細い針を刺して細胞を吸引して調べます。
それでも診断できない場合は,X線や超音波で病変部を見ながら太い針で吸引する方法や切開して病変部を切り取り調べる方法を行う場合があります。
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■ 乳がんの病期
I期 |
しこりの大きさが2cm以下でリンパ節への転移がないもの。 |
II期 |
しこりの大きさが2~5cm以下でリンパ節への転移が無いか,あっても少数のもの。 |
III期a |
しこりの大きさが5cm以下でリンパ節への転移がはっきりしているもの。
またリンパ節への転移の有無に関わらず,しこりの大きさが5cm以上のもの。 |
III期b |
しこりが肋骨や胸筋に固定しているか,皮膚が崩れたり,むくんでいる状態。
もしくはしこりの状態に関わらず鎖骨の上または下のリンパ節に転移があるか,同じ側の腕がむくんでいる状態。 |
IV期 |
遠隔転移があるもの。骨・肺・肝臓・脳などの遠隔臓器に転移がある状態。 |
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■ 乳がんの治療
乳がんの治療には手術,放射線,抗がん剤の三大がん治療がありますが,現在は確実な方法として手術が主流であり,放射線,抗がん剤は術前,術後の補助療法として行われることが多い治療法です。
従来,乳がんの手術では,腋の下のリンパ節をとること(液窩リンパ節廓清)は必要とされてきました。それはリンパ節転移の可能性を考慮してのことです。
しかし,腋窩リンパ節郭清をしたあとには,手術をしたほうの腕のむくみや上腕内側のしびれ,手術後の腋のリンパ液貯留,腋窩の傷の痛みなどがおこる場合があります。そこで近年,センチネルリンパ節生検により,リンパ節転移を判断し,腋窩リンパ節郭清を必要以上に行わないという方法がとられるようになってきています。
●センチネルリンパ節生検とは
この方法では色素やアイソトープを使って乳がん巣の周囲に注射し,その流れを追って,センチネルリンパ節を特定します。
このリンパ節は乳房内にできたがん細胞が最初に流れ着くと考えられ,このリンパ節にがん細胞がなければ,その先のリンパ節には転移していないと判断され,腋窩リンパ節の切除(腋窩リンパ節廓清)はおこなわれません。またこのセンチネルリンパ節にがん細胞が発見された場合には,その先のリンパ節にも転移の可能性があると判断して,腋窩リンパ節廓清はおこなわれます。
このセンチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節清の省略はまだ標準的な方法ではなく,保険適用にもなっていませんが,術後のQOLの低下を防ぐ有効な手だてとして,採用する病院が増えています。 |
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■ 手術
乳がんの性質や進行度により,手術の方法が異なり,乳房の切除の範囲の大小や,リンパ節廓清の有無,胸筋切除の有無などがあり,外見上の変化だけでなく,QOLの低下についても,術前によく医師から説明を受ける必要があります。
●乳房温存術
乳房の一部だけ切除する方法で,胸のふくらみや乳首を残すことが可能です。病巣を中心に円筒形に切除するか,乳腺に沿って扇状に切除する場合があります。
この手術は近年,内視鏡で行われるケースも多く,この乳房を温存する術式は増加していますが,適用されることが可能な場合は,腫瘍の大きさが3cm以下であり,複数でない場合など条件が限られます。
また術後にがん細胞の取り残しを考え,放射線治療を行うことも多く,抗がん剤との併用は生存率が高まるというデータも報告されています。
●胸筋温存乳房切除術
これは非定型的乳房温存術と呼ばれる方法で,乳房全体は切除しますが,大胸筋は温存します。大胸筋の下にある小胸筋は切除する場合とそうでない場合があります。
腋の下の液窩リンパ節はできるだけ取りのぞきますが,大胸筋を残すため,運動面でのQOLの低下は避けることができます。
●胸筋合併乳房切除術
この術式は乳房と胸筋,腋窩リンパ節をすべて切除します。かつてはこの手術方法が標準的手術方法として,定型式乳房切除術(ハルステッド式)と呼ばれ,実施されてきましたが,この方式は運動障害や腕のむくみやしびれなど機能障害を起こす上,治療効果もあまり上がらないため,現在ではがんが胸の筋肉まで進行している場合だけに行われます。
●乳房再建術
乳房再建術には手術の後に引き続いて行う一期的乳房再建術と,手術後時間をおいてから乳房再建を行う二期的乳房再建術とがあります。
乳房再建には患者や自身の組織を胸に移植する方法や液体やゲルの入った袋を胸の筋肉の下に入れる方法があります。
前者の方法には広背筋,皮下の脂肪,皮膚を用いた広背筋皮弁(こうはいきんひべん)と腹直筋,皮下の脂肪,皮膚を用いる腹直筋皮弁(ふくちょくきんひべん)の2種類の方法があります。
後者の方法では人工乳腺の場合,エキスパンダー(組織拡張器)を挿入し,皮膚を拡張します。その後シリコンインプラントまたは生理食塩水バッグに入れ替えます。からだの他の部位を傷つけずにすむのが利点ですが,メンテナンスが必要になります。
乳房再建を行った場合,再建時には乳頭や乳輪は形成しません。再建した乳房が安定してから(通常は手術後数ヶ月から1年ぐらいたってから),乳頭・乳輪形成を行うことができます。 |
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■ 放射線治療
乳がんの放射線治療には手術後に予防の意味で行うものと,乳房を温存するため,切除部を最小限にとどめ,放射線で補助する温存方法の一環として行う方法があります。
乳がんでは,リンパの流れは,大きく3つにわかれます。腋窩(腋窩動脈),傍胸骨(内胸動脈),鎖骨上鎖骨下(鎖骨下動脈)の3つです。リンパの流れは最終的には,鎖骨領域に集まります。したがって放射線治療でははこれらのリンパ腺に照射します。 近年,日本においても放射線治療を併用することにより乳がんの局所再発をに減らすことに効果が見られることがわかり,放射線治療の有効性に対する認識は高まってきています。
特に最新の放射線治療ではピンポイント放射が可能で,5cm程度の乳がんでも切除せず,治療に成功している例もあります。(三大療法の放射線治療のページ参照) |
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■ 抗がん剤治療
乳がんは薬物の有効性が高く,抗がん剤治療は術前,術後の補助療法として行われることが多い治療法です。術前の抗がん剤投与は切除を可能にするために,あるいは乳房を温存できるように,病巣部を縮小させることを目的として行われます。
また術後,リンパ節廓清が不十分と判断された場合,またがんの病期やがん組織の病理学的所見などから再発のリスクを予測し,抗がん剤投与が行われます。この抗がん剤補助療法により,全身再発率は35%低下すると言われています。
乳がんに対してはいくら抗がん剤の投与が効果的だとしても抗がん剤はがん細胞だけでなく,免疫細胞や正常細胞へもダメージを与える毒薬であるということは忘れてはいけません。
したがって乳がんの抗がん剤は複数の抗がん剤を半年間程度の短期間に集中して投与することが重要であり,1年以上の長期間にわたる投与は逆に再発の可能性を高めていることも考えられ,注意が必要です。 |
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■ ホルモン療法
乳がん細胞の発生・増殖には女性ホルモンであるエストロゲンが重要な役割を果たしています。エストロゲンが乳がん細胞に作用するためにはエストロゲンレセプターと結合することが必要です。逆にエストロゲンレセプターがない細胞にはエストロゲンは作用しません。
従って,その乳がんがエストロゲンに依存する性質を持っていれば,エストロゲンのはたらきや合成,分泌を抑え,エストロゲンが乳癌細胞に作用できない状態にして,がんを縮小させることができます。これがホルモン療法(内分泌療法)です。
乳がんの術後補助療法に広く使用され,最も標準的な薬として位置づけられられているのが抗エストロゲン剤で,タモキシフェンやトレミフェンなどがあります。
この薬は,乳がんの発育を促すエストロゲンががん細胞の受容体と結合するのを妨げることにより,乳がんの発育を抑える作用をもち,再発抑制効果があります。閉経状況を問わず効果を示しますが,閉経前の若い人よりは閉経後の人で高い効果が得られます。
エストロゲンは,卵巣の機能が働いている閉経前の人では、主に卵巣で作られ,卵巣の機能がなくなった閉経後の人では,副腎から分泌されたホルモンをもとに脂肪組織などで作られています。
この卵巣からのエストロゲンの分泌を抑制するのがLH-RHアゴニスト剤です。閉経前の人にこの薬を投与すると,体内のエストロゲンの量が低下し,乳がんの発育を抑制します。
また脂肪組織などにおけるエストロゲンの合成を抑制するのがアロマターゼ阻害剤です。卵巣機能がなくなった閉経後の人にこの薬を投与すると,体内のエストロゲンの量が低下し,乳がんの発育が抑制されます。 |
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■ 分子標的治療薬
乳がんではがんの特異構造に作用する分子標的治療薬である,トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)が効果をあげています。
これは,がん細胞の表面に存在するHER2受容体を抗原として作られた抗体で,転移性の乳がんの中でも,HER2強陽性と判定された患者のみに効果があらわれている薬です。判定結果において強陽性とは,HER蛋白の過剰発現を意味します。
このHER2と呼ばれる遺伝子は再発性進行乳がんの細胞の表面に25~30%の割合で発現しています。トラスツズマブはこの遺伝子と結びつき,がんの増殖を抑制します。
またこの薬は,免疫細胞ががんへの攻撃を仕掛ける目印になるとも言われています。最近の臨床データではトラスツズマブを,HER2抗原陽性の早期の乳がん患者に標準的な化学療法の後に投与すると,23カ月目の段階で死亡のリスクが34%低減できることが明らかとなりました。
また,がんが再発するリスクも36%低減できることも分かり,新しい乳がんの治療法として期待されています。
ただし米国の研究によるとこの薬は28%の人に心臓障害があらわれ,死亡に至った1例も報告されているので,投与には注意が必要であり,医師によく相談しましょう。
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■ 乳がん体験者の支援団体
乳がん患者を支援する団体や患者のサークルは全国に多数あります。単に治療に関する情報提供を受けられるだけでなく,メンタル面でのサポートにもなりますので問い合わせてみてください。なお乳がんだけでなく,がんの各種支援団体はがん治療の病院のページで紹介しています。 |