栄養不良を防ぐこと。また,悪い状態にもどさないこと
体脂肪が少ない体を維持すること。
栄養に関する副作用(食欲低下,吐き気,味覚変化,排便の変化)は最小限にすること。
QOL(生活の質)を最大にすること。 |
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がん療養中の栄養状態に問題が起きた場合のケア |
食欲減退がある人は,少ない量を頻回にとり,飲み物なしで食べる。これが摂取量増加に役立つことがある。
食べ物だけで必要な栄養を摂取できない人は,栄養価の高い飲み物や食べ物(市販品でも自分で作ったものでも可)により,エネルギーや栄養の摂取状況を改善できることがある。
これらの対策でも栄養を十分に摂取できない人の短期間の栄養サポートには,チューブを介しての,経腸栄養や中心静脈が必要になるかもしれない。
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食事の内容はがん治療の効果やその副作用にまで影響を与えるという研究報告もあります。
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がん治療の効果,副作用と食事の関係 |
乳がんで転移があり,抗がん剤治療(5FU+エピルビシン+シクロホスファミド)を受けている患者に対しDHA(ドコサヘキサエン酸)を1日1800ミリgを治療前7〜10日間と,治療中の5ヶ月間投与した。
DHAが血中に多く取り込まれた「高DHA群」と取り込み量が少なかった「低DHA群」を比較すると全生存期間中央値は前者が34ヶ月,後者が18ヶ月と「高DHA群」のほうが生存期間が延長している。
また,副作用に関しても「高DHA群」では好中球減少,貧血,血小板減少が「低DHA群」より軽い傾向を示した。 |
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化学療法に関して,低栄養だと副作用が増強することを証明した研究も報告されています。 |
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低栄養では抗がん剤治療の副作用が増強 |
非小細胞肺がんで抗がん剤治療(パクリタキセル+シスプラチン)を受けている患者を対象に栄養状態と副作用の関係を調べた研究では,低栄養の指標である血中アルブミンが低い患者や栄養異常がある患者は,栄養状態に問題がない患者に比べ副作用が増強することが明らかになった。 |
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放射線治療の副作用や治療効果とサプリメントの関係について興味深い報告があります。
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ビタミンE摂取と放射線治療の副作用や生存率との関係 |
頭頸部がんでビタミンE(αトコフェロールを1日400IU)とβカロテンを3年間摂取する群(βカロテンは研究途中で中止)と,プラセボ群に分け,放射線療法の副作用と効果について比較試験がおこなわれた。
「ビタミンE投与群」は「非投与群」に比較して口腔粘膜の障害など副作用は低減することが確認されたが,一方で生存率では有意差はないものの「投与群」で低くなる傾向を示した。
放射線照射の結果,活性酸素が発生し,それによるがん細胞の消滅もあるのですが,ビタミンEの大量摂取は活性酸素を除去し,副作用も低減するかわりにがん細胞への効果も弱めてしまうことが考えられます。
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抗酸化サプリメントとがん予防の関係 |
抗酸化サプリメントの効果をメタ分析(過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを 収集・統合し,統計的方法を用いて解析すること)した研究も報告されています。
この研究ではβカロテン,ビタミンA,ビタミンE,ビタミンC,セレニウムといった抗酸化物質のサプリメントについて「投与群」と「プラセボ群」に分けて比較した信頼性の高いデータを統合して分析した。
いずれのサプリメントもがん予防の効果はなく,逆にβカロテン,ビタミンA,ビタミンEに関しては,投与群の死亡率が高くなるという結果になり,ビタミンCとセレニウムは死亡率に影響がなかった。
また,ビタミンサプリメントのがん予防への影響を調査した研究では,マルチビタミン,ビタミンC,ビタミンE,葉酸の摂取と喫煙,肺がんとの関係について調査している。
その結果,これらのサプリメントを摂取しても肺がんの発生率は低下しないことがわかっただけでなく,それどころかビタミンEに関しては,1日の摂取量が100ミリg増えるごとにわずかながら肺がんのリスクが高まるという結果がでた。
以上の研究報告から瀬戸山氏は「がんを防ぐためにサプリメントで栄養を大量摂取することは勧められません。βカロテンを豊富に含む野菜を食べることと,サプリメントで大量のβカロテンを摂取することは同じではないと思います。」
また,「がんの患者さんでも,食べることができるのであれば,食物から必要な栄養を摂取するのが理想的で,サプリメントが有用なのは,食物から十分な栄養をとれない場合だと考えていいでしょう。」と述べています。 |
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記事の最後にサプリメントを利用する意味があるのは以下のような場合と示しています。
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食事が不十分で,検査によって栄養(ビタミンDやB2)の不足が明らかなとき。
栄養の摂取状況が推奨されるレベルより低いとき。
骨の健康のためカルシウムやビタミンDが必要なとき。
妊娠を考えている女性や妊娠中の女性で,葉酸を必要としているとき。
(ただしがん治療に問題がない場合)
がん治療に関連する骨減少などの合併症があるとき。 |
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