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放射線治療効果を飛躍的に高めた定位放射線治療
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放射線治療の理想は「がん細胞には最大の線量を,正常細胞には最小限の線量を」という言葉で表現されるように,がん細胞のみにピンポイントで照射することです。
しかし,がん細胞は体の内部にあるため,放射線が正常細胞を突き抜けないと,がん細胞には到達しません。
したがって,従来の放射線治療では,病巣だけに放射線を照射することが難しいため,副作用が生じたり,十分な線量をかけられないため,治療効果もあまり上がりませんでした。
現在は,複数の角度からがん細胞へ集中して照射することで,正常細胞への影響を極力減らすという方法が確立されています。
さらに腫瘍の輪郭に沿って,正確に照射することができるようになりました。これが定位放射線治療であり,体の副作用やダメージを抑えつつ,より強力な放射線を照射できるようになったのです。
この定位放射線照射を行うには病巣の正確な形態の把握,誤差1mm以下の正確な照射,患部に放射する線量の3次元的把握などが必要となります。
現在,ある調査によれば,この定位放射線治療により,病期が1A,1B期の肺がんでは従来の放射線治療成績を上回るだけでなく,5年生存率が手術の67.57%に対して,77.68%と,約10%も高い治療成績を残しています。
ただ定位放射線治療ができるこの最新放射線治療機器は高額である上に設置施設にも大きな費用がかかるため,設置施設も限られ,病院間の格差も大きいと言えるでしょう。
病院の選択は,放射線治療の専門家すなわち放射線腫瘍医がいることと,最新放射線治療機器を導入しているかが一つの目安となるでしょう。
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がん細胞内部で最大の効果を発揮する粒子線治療
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近年,サイクロトロン(円形加速器)やシンクロトロン(同期加速器)などの加速器を使って,陽子や炭素の原子核を加速し,がんに集中して照射する治療法が確立されました。 粒子のなかでも陽子を使う粒子線治療を陽子線治療と言い,炭素の原子核を使う治療を重粒子線治療と言います。
この粒子線治療の特徴は粒子が運動を停止する直前に最大のエネルギーを放出するという性質(ブラッグピーク)を利用し,がん病巣内部で粒子が最大のエネルギーを放出するようコントロールされているということで,従来の放射線治療では困難であった膵臓などのがん治療にも成果をあげています。
特に重粒子線治療では,X線やガンマ線で殺せないタイプのがん細胞も殺すことができます。しかし胃や腸のように不規則に動く臓器や,白血病のように全身に広がっているがん,広く転移したがんには適応できず,効果は固形腫瘍に限定されます。
陽子線治療は南東北がん陽子線治療センター(福島県),筑波大学陽子線医学利用研究センター(茨城県),国立がん研究センター東病院(千葉県),静岡県立静岡がんセンター(静岡県),名古屋陽子線治療センター (愛知県),兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県),福井県立病院 陽子線がん治療センター (福井県),メディポリスがん粒子線治療研究センター(鹿児島県)の8ヵ所で行われています。
また,独立行政法人放射線医学総合研究所では,炭素を使った重粒子線治療を行っており,2003年10月に高度先進医療として認可されました。
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HIMAC重粒子加速器(シンクロトロン)
提供 独立行政法人 放射線医学総合研究所 |
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これから期待される次世代放射線治療 = ホウ素中性子捕捉療法 = |
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