がん治療最新情報

   
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    がん治療最新情報−はじめに   

現在日本では,年間に約60万人の人ががんと告知され,約30万人の人ががんで亡くなっています。

がんは日本人の死因の第1位であり,二人に一人はがんで死亡するという時代になっています。

医療技術は日進月歩ですが,それでも現代の医療はがんを克服できたというにはほど遠いと言わざるを得ません。 なぜなら進行がんや再発したがんの完治は現在でも厳しい状況にあるからです。

最近ではEBM(evidence based medicine )=科学的根拠に基づく医療 が普及し,様々ながんのガイドラインや標準の治療法が確立されてきており,最も効果が高いとされる治療がどこでも受けられるようになりました。

しかし,現在の時点での標準治療は変化していくものであり,それが後に最良の治療法ではなかったとされる例も数多くあります。

患者の立場としては,医師から提示される治療法をそのまま受け入れるのではなく,まずがんやがん治療に関しての科学的知識を身につけ,ご自分で納得してから治療を受けられることが大切であると考えます。

このサイトでも紹介しているように,がん治療には手術をはじめ,抗がん剤,放射線などの三大治療を中心として,選択肢がいくつもあります。

主治医がすべての治療法に精通しているわけではなく,主治医から治療法を提示されたら,他の選択肢はないのか,確認してみることが大切です。

そして,納得できないのものがあるなら,セカンドオピニオンを求めましょう。現在では,セカンドオピニオンを求めるのは患者の権利として認知されています。

患者さんの中には,それで主治医との関係が悪くなるのではないかと気兼ねする方もいらっしゃるようですが,そこで不機嫌になるような医師では,患者さんの立場に立った今後の治療も期待できません。

ただし,セカンドオピニオンを受ける=他の病院で治療を受けるということではありません。

セカンドオピニオンを受けて主治医が提示した治療に納得できる場合もあるでしょうし,その場合は元の主治医に素直に自分の見解を伝え,最初の治療法でお願いしたい旨を伝えればいいのです。

また,セカンドオピニオンで異なった見解が提示され,そちらの方がよい場合は転院すればよいでしょう。

ここで,大切なことは,医師や周囲への気兼ねや遠慮によって,助かるというチャンスを逃すことがないよう積極的な勇気を持つことです。

そして,判断をすべて医師まかせにするのではなく,ご自分でもわかるまで調べるなど,正しい知識は身につけておきましょう。


   

変わりつつあるがん治療の常識


これまで日本のがん治療は長い間,切除手術を第一としてきました。

しかし,がんの種類によっても判断は異なりますが,がんによっては手術以外の治療法がよいのではないかという考え方が,最近では主張されるようになってきています。

たとえば,肺ガンについての診療指針を作成している厚生労働省の研究班は,非小細胞肺ガンの摘出手術とリンパ節郭清について,「早期では,体調の改善や再発を少なくする上でも,推奨するだけの根拠がない。」と指摘し,これまで標準的とされた手術を中心とした治療法に疑問を投げかけています。

末梢にできた肺ガンで,リンパ節転移のないがんを確実に確認することができれば,リンパ節郭清をおこなわない縮小手術でも治癒は可能で,また,体を傷つけない放射線でも治療は可能です。

今後はリンパ節に転移していないがんをいかに選び出すかという検査精度の向上が大切になってくると考えられます。

また,食道ガンの場合は,これまで,喉,胸,腹の三ヵ所を切って腫瘍部分を切除し,胃と残った食道をつなぐという大手術が常識と考えられ,その結果大きなQOL(生活の質)の低下が患者を苦しめることにもなっていました。

しかし,JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の食道がんグループは,これまでの臨床試験の結果,高度の進行がんには,手術よりも化学放射線療法を選択すべきであり,また,早期のがんでも,この化学放射線療法は,手術に匹敵すると思われる成績が確認されたとしています。

さらに,厚生労働省の研究班でも「抗がん剤や放射線による治療も有効性があり,標準的な治療になる可能性がある」と発表しています。

すでにアメリカなどでは,放射線と抗がん剤を併用する治療が主流となっています。

また,乳ガンも最近では縮小手術が主流となり,大きく切って治す治療から小さく切って治す治療へ移行しています,今後,乳ガンは切らずに治す治療へと向かっていくと考えられます。

このように,身体への負担が軽い治療法がある場合は,それらも選択肢として十分に考えるべきでしょう。

手術によって治癒が可能になればよいのですが,手術も切除の範囲を誤ったり,その身体的負担が大きすぎると,延命どころか命を失うということになりかねません。

これからは,身体の苦痛や負担がより軽い治療法にシフトしていくといえるでしょう。



   

進歩する手術療法


すでに述べたように,がん治療は患者にとって,より負担の少ない治療法が選択され,患者のQOL(生活の質)が重視される時代になっています。

三大療法の一つである手術も例外ではなく,たとえば,乳がんなどは,転移しやすいリンパ節の一部を調べ,転移がなければ,リンパ節の切除を省略したり,放射線や化学療法を併用し,できるだけ乳房を温存するなどの縮小手術も積極的におこなわれるようになりました。

また,口や肛門から内視鏡を入れ,粘膜を切除する負担の極めて少ない内視鏡手術も積極的に行われるようになっています。

さらには,胸や腹部に小さな穴をあけ,カメラを挿入し,モニターで確認しながら行う「腹腔鏡下手術」や「胸腔鏡下手術」も普及し,術後の痛みが少なく,回復も早いというメリットがあります。

しかし,このようながんの手術は患者にとって負担が少ないというメリットがある一方で,技術の習得には訓練が必要なため,医師の技術が低いと,出血などの事故につながるだけでなく,最悪の場合,患者が死亡するケースも少なからず報告されています。

したがって,定評のある病院や医師を選択するだけでなく,開腹手術と比較して,安全に手術できるのか,また,再発しないようにしっかり治せるのか,患者は主治医によく相談し,納得した上でこのような治療を選択すべきでしょう。



 

進歩する化学療法
免疫チェックポイント阻害剤 


これまで,化学療法は,副作用が強く,延命効果も数ヶ月程度の場合も多いといわれ,抗がん剤をがん治療に使用することに否定的な意見も,ネット上や書籍では数多くみられます。

しかし,近年化学療法はめざましい進歩を遂げています。

現在では,複数の抗がん剤を同時に使用する「多剤併用療法」が中心となっています。

これは,複数の薬剤を併用することにより,それぞれがんを攻撃するしくみが異なるため,相乗効果が狙えるというだけでなく,個々の薬剤の投与量を少なくすることが可能なため,薬剤の副作用が分散され,副作用を軽減することが可能となりました。

さらには,手術後に取り切れなかった腫瘍をたたく「術後補助化学療法」が肺がんや胃がん,大腸がんなど多くのがんで標準治療となってきています。

また,乳がんでは,手術前に化学療法で腫瘍を縮小させてから,手術する「術前化学療法」が実施されるようになり,乳房が温存されるケースが多くなっています。

一方で,近年登場した分子標的治療薬は,細胞毒とも呼ばれる従来型の抗がん剤よりも,副作用が少ないことが多く,事前にがんの遺伝子型を調べ,適合する場合のみ投薬することで,大幅に生存期間も延長されています。

また,その薬剤に適合しない患者にとっては,効かない薬剤を無理に投与することによる無駄な副作用や時間,経済的な出費を抑えることができるようになったともいえるでしょう。

特に,がん治療の技術として,最近大きな成果をあげつつあるものが,免疫チェックポイント阻害剤です。

この抗がん剤は日本人よって開発され,特に悪性リンパ腫では,全身に転移したケースでも,治癒した例もあります。


がん細胞は,自らを守るために攻撃をしかけてくる免疫細胞のレセプターにはたらきかけ,その攻撃能力を奪う性質があります。

そこで,このレセプターを薬剤によってブロックすることで,がん細胞に対する免疫細胞の攻撃抑制を解除できるようにしたのです。

いわば,免疫治療の一種とも言え,これまでの薬剤とは全く作用機序が異なるものです。

この薬剤には抗CTLA-4抗体薬(イピリマブ)や,抗PD-1抗体薬(ニボルマブ)がありますが,特に後者は,悪性黒色腫であるメラノーマだけでなく,2015年には非小細胞肺がんの薬剤としても承認されています。

現在,この薬剤はさらに他の部位への適応を目指して,全世界で臨床試験が行われています。

この画期的な薬剤の開発により,もう10年もすれば,抗がん剤によりかなりのがんが根治できるようになるかもしれません。


   

進歩する放射線療法



放射線療法は,がんのみに集中して放射線を照射する技術が確立し,より副作用が少なく,身体的ダメージも少ないがんの治療法として注目されるようになりました。

たとえば,近年登場したIMRT(強度変調放射腺治療)では,腫瘍の形に合わせて,放射線のビームを立体的に照射できるだけでなく,そのビームの強度も変えることが可能となり,より正常細胞への影響を減らすことを可能にしています。

その結果,前立腺がんなどでは,患者の負担だけでなく,機能温存などから考えても手術を上まわるメリットが得られるようになっています。

さらに,核物理学とコンピュータ技術の進歩は,粒子線の医療への応用を可能にしています。

この技術を放射線照射に生かすことで,陽子線や重粒子線の,腫瘍内部で最大のエネルギーでがん細胞を破壊した後には,消滅するという性質を利用した,より理想的な放射線療法へと進歩を遂げています。




   

大切な治療選択の判断


でに述べたように,三大療法をはじめ,治療法が大きく進歩し,患者の立場としては,効果的な選択肢が増えているというメリットがある反面,どの治療法を選択したらよいか判断に迷うという,難しい問題にも直面しているといえるでしょう。

ところで,癌治療の話題として,作詞家のなかにし礼氏がご自分の食道がんを陽子線で治療したというニュースはマスコミで大きく取り上げられました。

かれは,外科医の名医から,「あなたの食道がんは,手術で治ります。」と手術をすすめられましたが,ご自分の年齢や体力的な面も考慮し,手術ではなく,陽子線治療を選択したのです。

その結果,陽子線治療は成功しました。しかし,残念ながらその後,リンパ節に再発が見つかり,手術したそうです。

再発したことで,この陽子線治療の選択は正しかったのか,あるいは,食道の切除による大幅なQOL(生活の質)の低下を覚悟で,名医の言われる通り,手術したほうがよかったのか,判断は難しいところでもあります。

というのは,なかにし氏は,治療後にも相変わらず,リスク要因である喫煙・飲酒を止めていなかったそうで,再発には,このような彼の生活習慣も影響していた可能性も否定できません。

がん治療には,選択肢が複数あり,最良の選択には,高度な判断力が求められ,患者は最終的には自分自身が決断しなければならないという難しい局面に立たされることになります。

それゆえ,患者側として,知識を獲得しておくということはとても重要です。


    納得した治療を受けるために 

がん治療で大切なことは,結果もさることながら,いかに納得した治療を受けられるかということであり,それがいかに納得した人生をおくれるかということにもつながってくるともいえるでしょう。

主治医から提示された治療法に納得がいかないのなら,すでに述べたように,積極的にセカンドオピニオンさらにはサードオピニオンまでも受け,最良の治療法をご自分で納得して,選択していただきたいと考えます。

また,標準治療と認められていない治療法でも最新の画期的な治療法はこのサイトで是非知っていただきたいと思います。

このサイトではできるだけ最新の効果があると思われる治療法を紹介していきたいと考えています。このサイトが少しでも皆様の治療選択のお役に立てれば幸いです。

  
       
 
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