免疫細胞療法とがん免疫治療

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がん免疫治療・免疫細胞療法とは何か−はじめに

 
 
   
このサイトでは,免疫治療について解説し,がん治療の一つの選択肢として紹介していきたいと考えています。

私達の体内では,変異細胞すなわち,がん細胞は毎日,数千個発生しているといわれています。

ただし,この細胞が増殖し,肉眼でもとらえられるようになる人は一部の人です。

多くの人が,がんという病気にならないのは,リンパ球と呼ばれる免疫細胞が日々がん細胞を攻撃し,死滅させているからに他なりません。

しかし,がんの増殖力にこれらの細胞の力が負けてしまうと,腫瘍は増殖を重ね,肉眼でも確認できるがんという病気になってしまうわけです。


近年の研究により,がん細胞は周囲の細胞と共に,抑制物質を放出し,免疫細胞の力を弱めてしまうということがわかりました。

また,免疫細胞が産生するサイトカインと呼ばれる物質が,高濃度では逆にがん細胞をより強力にしてしまうことも判明しています。

さらに,がん細胞は,免疫細胞が標的とする目印となるがん抗原を隠す場合もあります。

このようなメカニズムを通して,がん細胞は攻撃から逃れ,増殖していくのです。


ところで,免疫力を人為的に増強させることで,腫瘍を退縮させることが可能であるという事実が初めて証明されたのは,1980年代です。

免疫細胞は,細菌やがんを攻撃するために,様々な物質を分泌しています。

その一部がサイトカインと呼ばれるもので,1980年代には
T細胞リンパ球の増殖を促進するサイトカインの一種インターロイキン2(IL2)の合成に成功しました。
 

このIL2を患者に投与する臨床試験で,腎細胞がんやメラノーマの腫瘍が縮小されることが確認されたのです。

その後,様々な治療方法が研究,考案され,現在に至っています。



現在,免疫治療は,大きく2種類に分けることができます。

一つは,細胞を活性化したり,増殖させたりする薬剤を,注射や点滴で投与したり,内服することで,免疫力を高める治療法です。

この治療法には「がんワクチン療法」「BRM療法」「抗体療法」「サイトカイン療法」などがあります。



もう一つの方法は,患者の血液から免疫細胞を抽出し,培養液で増殖,活性化した後,体内に戻すという方法で,「活性化自己リンパ球療法」あるいは「免疫細胞療法」などと呼ばれています。

この治療法で,「もう治療法はありません。」と見放された患者が救われるケースもあり,がん治療の三大療法の代替療法として,あるいは,補助療法としては有効な治療法と考えられています。


この治療法が最も適していると考えられるのが,手術や抗がん剤,放射線治療で,がんを治療した後に再発予防として行う方法です。

この方法が優れている点は,副作用があまりみられないことであり,手術で体力を消耗した後や高齢の方にも身体的負担も少なく活用できるというという点がメリットです。

これから,この治療法も進化し,成績も向上していくでしょうが,現在のレベルでは,進行がんをこの治療法単独で治癒させることは困難です。

したがって,手術や放射線治療が可能なら,まずそちらを選択し,補助的に利用すべきです。

この免疫治療は,人間本来が持っている治癒力を強化する方法なので,効果がでるまで,時間がかかります。

そこで,手術や放射線で腫瘍を取り除いたり,縮小させた後におこなうことは,効率性の面から考えても有効といえるでしょう。


この治療法単独では治癒できないまでも,免疫細胞の力によって,体調がよくなることも多く,QOLを維持しながら,長期にわたってがんの増殖を抑えることも可能です。

三大治療によってはもう治療法はないと言われた患者の方々が,この治療に救いを求めるという,いわゆる「がん難民」の最後の希望となるケースも多く,今後も研究の発展が望まれています。


   
 
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がん治療において重要性が認識されつつある免疫細胞

   
すでに述べたように人間にはがんを排除する免疫機能が存在しますが,これは加齢と共に低下していきます。

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上記の表からもわかるように,免疫力は20代をピークとして,それ以降下がり続けます。

それに対して,がんによる死亡者は増加していくという負の相関関係があります。

加齢と共に,死亡者が増えるのは,加齢と共に細胞分裂の回数が増え,DNAのコピーミスも増え,異常な細胞が増加するという要因もありますが,このように免疫力の低下も大きく関係しているといえるでしょう。
 
 
   
   
現在,がん治療において免疫治療を軽視する研究者や医師もいます。

「腫瘍は免疫細胞で殺せなかったから発生したのではないか。目にみえないほどのがんなら,駆逐してくれるだろうが,目に見えるほど大きくなった腫瘍の治療には,たいして役に立たない。」このように考える人も大勢います。

しかし,2007年のフランスの研究グループによる動物を使った実験では,下のグラフからもわかるように,がん治療における免疫細胞の重要性を示すものとなりました。
 
   
       
この実験では,まず,免疫不全を人工的に起こしたネズミと,そうでないネズミの双方に大腸癌を移植し,その後化学療法を行い,腫瘍の大きさを比べるというものです。

その結果,正常なネズミでは腫瘍の大きさがあまり変わりませんでいたが,免疫不全のネズミでは抗がん剤を使用したにもかかわらず,腫瘍の増大がありました。

また,次に,免疫不全のネズミと正常なネズミに乳がんを移植後,放射線療法をおこないましたが,やはり免疫不全のネズミの腫瘍は増大してしまったのです。

これはあくまで動物の実験によるものであり,このような実験を人間でおこなうことは倫理上不可能でしょうが,抗がん剤や放射線治療も,免疫の力があって成り立つものであるということを示唆する興味深い実験結果です。 

このように,免疫力はがん治療において,抗がん剤や放射線治療においても,その効果を得るために重要な力といえるでしょう。



ところで,皆さんは放射線治療は免疫細胞の力を借りて成り立っているということをご存じでしょうか?

あまり,知られていない事実として,放射線治療においては,がん細胞は放射線だけによって死滅させられているだけでなく,放射線を浴びて弱ったがん細胞に,免疫細胞が取り巻き,これを死滅させているということがあります。

以上のことからも,この治療法は,抗がん剤治療や手術,放射線治療の補助療法として,有効であるといえるでしょう。



現在,がん治療においては標準治療という大規模な臨床試験に裏付けられた治療法が,多くの病院で採用されています。

がんの免疫療法は,国内では大規模な臨床試験はおこなわれていないため,標準治療としては認められてはいません。

ただし,ここで確認しておきたいことは,標準治療となっていない,すなわち保険適応になっていないから効果のない治療法とはいえないのです。

体内では,どの免疫細胞がどの程度効果を示しているのか検証が難しいという問題もあります。


   
     

       
 

 
治療の成功の鍵は免疫抑制の解除  
 
   

近年では,腫瘍が発生すると,多くの患者が免疫細胞の活性度が大幅に低下するという免疫抑制の状態に陥るということがわかっています。

免疫細胞の数だけ増やしても,がん細胞は身を守るために,その力を抑えるはたらきのある制御性T細胞(Treg)を味方につけているため,効果があらわれにくいということも判明しています。

現在,免疫細胞の攻撃を抑えてしまう制御性T細胞をいかにしたら排除できるかという研究が進んでいます。

これまではいかに免疫細胞を増やし,活性化させるかという視点のみで研究が進められてきましたが,これからはその力を抑制するものをいかに排除できるかということにも,研究の力が注がれることでしょう。


いくら,免疫細胞を増殖,活性化させても,その力を抑制するはたらきを抑えなくては,がんに有効に作用することができません。

現在,この制御性T細胞などをはじめとする免疫抑制を解除させる研究が進んでおり,これをいかに実用化させるかが,免疫治療のブレイク・スルーすなわち,成功の鍵となることは間違いありません。

事実,すでにこれらの免疫抑制を解除する抗体医薬品が開発され,臨床研究が行われています。

今後は,このような研究も進み,免疫治療単独でも効果をあげるようになり,がんの三大治療につぐ,第4の治療法として認められるようになると予測できます。

今後は,免疫治療がいち早く保険適応となり,標準治療の一つとなっていくことに期待したいものです。



   
 
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