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がんワクチン療法とは
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皆さんはがんワクチン療法と聞いて何を連想されるでしょうか?
子宮頸癌ワクチンやインフルエンザワクチンは最近よく話題になっていますが,これらは,病気が発症する前に,ワクチンを投与することで,免疫力を高め,これらの疾病にかかりにくくしています。
このワクチン療法を世界で初めておこなったのが英国のエドワード・ジェンナー(Edward Jenner,1749年〜 1823年)です。
彼は牛の乳搾りをしている女性が,牛の天然痘といえる牛痘にかかった後に,人が感染する天然痘にはかからないことを発見し,これを天然痘の予防に利用できないかと考えたのです。
そこで,少年の皮膚に傷をつけ,そこに牛痘に感染した女性からとった膿を入れました。
その後,天然痘を少年に投与しましたが,軽い発熱程度で,天然痘が発症することはありませんでした。
こうして,ジェンナーは世界ではじめて,種痘(天然痘の予防接種)に成功したのです。
天然痘はウィルスが原因ですが,現在でも,牛に感染した病原菌を利用したBCGという予防接種があります。
これは,牛が感染した牛型結核菌の毒性を弱くしたものを接種し,人が感染する結核を予防するためのものです。
これらは,一度,病原体を認識した免疫細胞はその病原体を記憶し,再び体内に侵入したときには,すぐに攻撃できるという獲得免疫の性質を利用したものです。
現在,実施されているがんワクチン療法は,がん細胞の抗原と同じものを注射で,癌患者に接種し,免疫細胞のがんに対する攻撃力を高め,がん細胞を死滅させようというがんの免疫療法です。
現在おこなわれている一般的なワクチンでは,病気が発症する前に,病気を予防するためにおこなわれています。
これに対し,がんワクチン療法は,がんの再発予防という目的もありますが,すでにがんになっている患者をワクチン投与によって,治療しようという積極的な目的もあります。
そこで,米国では,このがんワクチン療法を「治療用がんワクチン」(Therapeutic cancer vaccine)と呼んで,疾病の予防的なワクチンと区別しています。
このがんワクチン療法が,免疫細胞療法と異なる点は,免疫細胞療法が,免疫細胞を体外に取り出して,活性化・増殖させるのに対して,がんワクチン療法では免疫細胞を体内で強化するという点です。
現在,がんワクチン療法は,まだ,研究途上の治療法であり,標準治療として確立しているわけではありません。
しかし,このがんワクチン療法で,標準治療では治療法がないといわれたがん患者のがんが消失したという報告もあり,今後の発展が期待される治療法でもあります。
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