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がん免疫治療の効果と奏効率
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免疫細胞療法をはじめとするがんの免疫治療はどの程度の効果があるのか,患者の立場では気になるところです。
その効果が立証されるためには,ある程度の規模の臨床比較試験をおこなったデータによって裏付けられたものでなくてはなりません。
よく,「エビデンス(科学的根拠)に基づいた治療」ということが,よくいわれますが,このエビデンスとは大規模臨床試験の結果に裏付けられた治療といえるでしょう。
がんの免疫療法に関しては,小規模な臨床試験はおこなわれているものの,
この大規模な臨床試験に基づくデータはほとんどないという実態があります。
免疫細胞療法は培養にお金がかかり,医療行為ではあっても医薬品として認められない,すなわち保険適応となる可能性が低いため,臨床試験に資金が集まらないという事情もあります。
しかし,臨床試験に基づいたエビデンスがないから効果がないとはいえないのです。
ただし,現在の時点では,手術,抗がん剤,放射線治療のがんの三大治療にとってかわるほどの治療効果があるものではなく,手術で治療できるならそちらを選択すべきであり,手術しなくとも免疫治療で治そうという,過剰な期待は危険です。
効果から考えるならば,これら三大治療の効果を高める,あるいはその治療効果を補う補助療法として考えるべきです。
また,標準治療では治療できない場合の代替療法や緩和医療としては,QOLを高く維持できるという面からも有効といえるでしょう。
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数値で表せない免疫力やQOLの評価は難しい
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よく「免疫力が高い,とか低い」などという言葉を耳にしますが,免疫力を示す指標は,はっきりとは定義されていないというのが現状です。
ただし,白血球数や,サイトカインの生産量,細胞の傷害活性度などが免疫力の一面をとらえるデータとしては使用されています。
ただし,細胞障害活性度などは体外で測定したものが体内で維持されるとは限らず,全身の総合的な免疫力を数値で表すことは難しいのです。
よく,免疫療法では,QOL(生活の質)を高く維持できるといわれ,それが最も大きなメリットでもあるといわれてもいます。
免疫療法で腫瘍の縮小がみられたり,生存期間が延びることもあり,これははっきりとした数値であらわせます。
しかし,免疫療法のメリットでもある,副作用が少なく,QOLを高く維持できるという状態も,治療の「効果」として評価される必要があります。
今後,このようなQOLに関しても,客観的な指標ができることが大切であると考えます。
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免疫細胞療法の治療効果としての奏効率
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化学療法では,がんが完全に消失したと判断された状態が4週間以上続いた場合を「完全寛解」と呼んでいます。
また,がんの断面積が半分以下または最長径で7割に縮小した状態が4週間以上続いた場合を「部分寛解」と判断して,化学療法が奏効したと判断しています。
免疫細胞療法では,がんの大きさが一定の期間かわらない状態,すなわち[不変」が占める割合が多いことが特徴の一つでもあります。
免疫細胞療法で実績のある瀬田クリニックの報告によると,1999年から2004年までに治療を受けた患者は2055例で,この中で835例で治療効果の測定が可能でした。
その内容は,「完全寛解」が8例,「部分寛解」が120例,がんの大きさが断面積で半分以下にはならなかったもののその状態が3ヶ月以上変化しなかった「不変」が270例,6カ月以上変化しなかった「長期不変」が72例,という結果でした。
抗がん剤治療と同様の基準に従えば,「奏効率」は「完全寛解」+「部分寛解」で全体の15%という効果になります。
しかし,このような治療では,抗がん剤のような強い副作用がなく,QOLを下げることなく維持でき,「長期不変」についても十分に価値のある効果と考えられます。
したがって,この「長期不変」を加えると,「完全寛解」+「部分寛解」+「長期不変」で全体の24%が有効であったと判断されます。
このデータの対象となる患者のがんが,ほとんどが標準治療で治療が困難な進行度がステージWに当たる進行がんや再発がんであることから考えると24%という有効率は決して低いとはいえません。
腫瘍の縮小や消失などの効果は弱いものの,がんと共存しながらも,高いQOLを維持でき,元気に過ごせる免疫細胞療法はもっと評価されるべき治療法といえるでしょう。
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