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γδT(ガンマ・デルタ・ティー)細胞とは |
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免疫細胞療法などに利用される免疫細胞はいくつかの種類がありますが,その中でもγδT細胞は近年注目されている免疫細胞です。
がん治療効果のある免疫細胞は,白血球のなかでもリンパ球に分類されます。
その中で,抗原を認識して攻撃する特異的免疫細胞の一種にT細胞があります。
T細胞のほとんどはαβT細胞であり,免疫細胞の中でγδT細胞が含まれる割合は2〜3%にすぎません。
このγδT細胞の特徴として,多様なレセプター(受容体)を多く持っているということがあげられます。
がん細胞には,がん特有の抗原が細胞表面にみられ,T細胞はそれを認識しますが,γδT細胞は,αβT細胞が見逃してしまうがん抗原をもとらえ,攻撃することができるのです。
免疫細胞の種類別割合 |
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詳しく説明すると,γδT細胞は,樹状細胞などから提示される情報を得なくとも,IPPやMIC A/Bなど,がん細胞に見られる抗原分子を独自に感知し,攻撃を加えることができます。
このような優れた特徴を持つ,γδT細胞ですが,血中に含まれる数が少なく,これまで利用することは難しいとされていました。
しかし,最近になって,ゾレドロン酸によってこのγδT細胞を活性化,増殖させる技術が確立し,免疫細胞治療に利用することが可能になったのです。
さらに,このゾレドロン酸はがん患者に投与することにより,がん抗原の一つであるIPP を多く発現させ,γδT細胞の攻撃力を高めることも可能であることが判明しています。
このゾレドロン酸は骨粗鬆症やがんの骨転移の治療薬として使用されているもので,人体への安全性も高い治療薬です。
治療の流れとしては,採血を行い,血液中からリンパ球を取り出し,ゾレドロン酸とIL-2で培養し,γδT細胞を選択的に活性化,増殖させます。
その後,増殖させたγδT細胞を点滴で患者の体内にもどします。
現在,東大医学部附属病院の呼吸器外科では,従来の標準治療ではもはや治療法がないとされる非小細胞肺がんの患者を対象に,ゾレドロン酸誘導γδT細胞を利用した免疫細胞治療の臨床研究をおこなっています。
すでに終了した第T相臨床試験では,治療の安全性が確認され,QOL(生活の質)を維持したまま,15の症例中6症例でがんの進行の抑制も確認されています。
さらに,患者の無増悪生存期間の延長も認められ,この試験の対象者が標準治療では,治療が困難な進行がんや再発がん患者であることを考えると,この治療法の有効性が証明されたといえるでしょう。
最近の国内の臨床報告では,腎細胞がんの肺転移に対するγδT細胞療法の治療成績は,臨床試験第T,U相において,11名の患者中1名で腫瘍の完全消失,5名で不変状態が維持されたというものでした。
このように免疫細胞治療において,腫瘍が完全に消失という結果はかなりの好成績といえますが,現在の時点では臨床例が少ないため,安全性や治療効果については,今後の臨床試験の蓄積が必要といえるでしょう。
このゾレドロン酸投与によるγδT細胞療法は民間の免疫細胞治療専門のクリニックでもすでに行われており,今後の発展が期待できる治療法といえるでしょう。
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