免疫細胞の種類と特徴

  すべての免疫細胞は造血幹細胞から分化

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免疫細胞の種類と特徴
     
 
                           
 
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免疫細胞はどのようにして生まれるか  
     
免疫細胞のもととなる細胞は骨髄でつくられる造血幹細胞であり,免疫細胞はそこから分化したものです。

この造血幹細胞は二つの大きな特徴を持っています。一つは,造血幹細胞自身を複製する能力を持っているということであり,もう一つは白血球・赤血球・血小板など血液中のすべての成分に分化する能力を持っているということです。

造血幹細胞は,大きく骨髄系幹細胞とリンパ球系幹細胞に分化します。
これらは,見た目では,ほとんど同じ形をしており区別がつきません。

これら幹細胞は,前駆細胞とよばれる細胞に分化し,さらに血小板や赤血球,白血球に分化していきます。

免疫細胞は骨髄系の免疫細胞と,リンパ球系の免疫細胞とに分けることができます。

T細胞やB細胞,NK細胞,樹状細胞はリンパ球系の細胞で,一方,単球系(マクロファージや樹状細胞)や顆粒系(好中球,好酸球,好塩基球)は骨髄系の免疫細胞といえます。

このように,すべての免疫細胞の大元は造血幹細胞であり,その細胞から分化したものです。


   
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がん治療で効果を発揮する細胞とは

   
上記の表からもわかるように免疫細胞の中心は白血球であり,リンパ球,単球,顆粒球から構成されています。

このような,免疫細胞の中で,特にがんの攻撃に関わっているのが,マクロファージ・樹状細胞・NK細胞・T細胞です。

免疫細胞の一種であるB細胞は抗体による攻撃であり,これはウィルスなどには効果がありますが,がん細胞やウィルスに感染した細胞に対しては,弱いといわれています。

現在,免疫細胞療法やがんワクチン療法など,がん免疫治療に利用される免疫細胞は樹状細胞・NK細胞・T細胞です。

また,最近ではNK細胞とT細胞の両方の性質を合わせ持つ,NKT細胞も発見されており,これを活用している免疫細胞療法が現在,千葉大学で臨床研究中です。



免疫細胞の種類と特徴

 

顆粒球

顆粒球は白血球の60%を占め,細菌やウィルスに対して直接攻撃をする自然免疫の性質があります。

顆粒球には好中球,好酸球,好塩基球の3つタイプがありますが,この中で好中球は90%以上をしめています。

この好中球は貪食能力があり,細菌などを取り込み蛋白質を分解するする酵素で細菌を破壊し消化してしまいます。ただし,この顆粒球は直接がんには関わりません。


マクロファージ・樹状細胞

マクロファージも樹状細胞も造血幹細胞から分化した単球と呼ばれる細胞からさらに分化したものです。

両方の細胞に共通していえることは,細菌やがん細胞に対して,貪食能力があり,細菌やがん細胞などを取り込み,分解し,処理できるということです。さらに分解した異物の一部を細胞の表面に抗原として提示し,T細胞に認識させています。

樹状細胞は,マクロファージほど貪食能力は高くはありませんが,T細胞に対して,効率的に抗原提示を行うことができ,特に最近ではその効率のよさから免疫細胞療法などの癌免疫療法でも活用されるようになってきています。



リンパ球


リンパ球はリンパ球系幹細胞から分化したもので,白血球全体のの35%を占めています。

B細胞,T細胞,NKT細胞,NK細胞はなどの免疫細胞はすべてリンパ球に属します。

これらは,ウィルスや細菌,がん細胞に対しての攻撃力を持っています。

リンパ球系免疫細胞  性質・特徴
NK細胞
       
    NK細胞は自然免疫系の細胞です。 文字通り生まれつき異常な細胞を殺傷する能力を持っています。 

常に,体内を巡回しながら,がん細胞,ウィルス感染細胞などを発見すると,単独でパーフォリンをというタンパクを放出し,病原体に穴をあけ,グランザイムという酵素で,相手をアポトーシス(細胞自死)に追いやります。

NK細胞は,T細胞と異なり,がん細胞の目印となるMHCクラス1分子を発現していないがん細胞を攻撃・死滅させることができます。
 

NK細胞は,免疫細胞療法にも利用されている細胞ですが,増殖・と活性化の両立が難しいともいわれている細胞です。
 
       
B細胞
       
   

B細胞は獲得免疫系の細胞です。

抗原提示を受けたヘルパーT細胞の指令を受けて抗体を産生します。

この抗体がウィルスや細菌と結合し,それらを無力化したり,貪食細胞のマクロファージに捕食されやすくします。

このB細胞はがん細胞よりも,ウィルスに対して能力を発揮します。

病原体が死滅しても,適合したB細胞の一部はメモリーB細胞として長く残り,次回の侵入の際に素早く抗体が産生できるようになっています。

 
       
T細胞
       
    T細胞(T cell)は,獲得免疫系の細胞です。

T細胞は免疫細胞療法などの免疫療法でも,よく活用されている免疫細胞です。

他の免疫細胞と同様に骨髄で生まれますが,その後,胸腺という組織に移動します。

胸腺では,自己と非自己を見分ける能力を身につけますが,身につけられなかったT細胞は胸腺で死滅し,生き残るのはわずか5%といわれています。

T細胞はキラーT細胞,ヘルパーT細胞,サプレッサーT細胞,レギュラトリーT細胞の4つのタイプがあります。

ヘルパーT細胞は細菌やがん細胞などを貪食したマクロファージや樹状細胞の抗原提示を受け,Th1型はキラーT細胞に,Th2型はB細胞に攻撃の指令を出します

指令を受けたB細胞は抗体で,また,キラーT細胞はがん細胞やウィルスにとりつきNK細胞と同様の方法で破壊します。

ただしキラーT細胞が攻撃できるのはがん細胞の目印となる MHC分子を発現しているがん細胞に限られ,このMHC分子を消失させたがん細胞には攻撃できません。

また,サプレッサーT細胞はサイトカインを放出し,キラーT細胞やB細胞の攻撃を終わらせるはたらきがあります。

一部のT細胞は病原体が死滅しても生き残り,メモリーT細胞として長期にわたり生存し,次回の進入に備えることができます。

レギュラトリーT細胞は,最近になって発見されたT細胞であり,免疫細胞のはたらきを制御しています。

このT細胞は,比較的培養がしやすく,免疫療法にはよく活用されます。
 
       
NKT細胞
       
    NKT細胞は自然免疫のNK細胞と獲得免疫のT細胞の両方の性質を持つ最近発見された細胞で,T細胞に属すると考えられています。

NKT細胞は,他のリンパ球に比べ数が非常に少なく,全体の0.01%しか存在しません。

しかし,NKT細胞は,NK細胞と同様にがん細胞の目印となる MHC分子を発現していないがん細胞を直接攻撃・殺傷することができます。

さらに,ヘルパーT細胞同様に,キラーT細胞に活性化刺激を出したり,B細胞に攻撃指令を出すことができます。

ヘルパーT細胞は,キラーT細胞とB細胞でサイトカインを使い分け,同時に指令を伝えることができません。

ところが,NKT細胞は,キラーT細胞とB細胞の両方に,同時に指令を伝えるサイトカインを分泌できるのです。

現在,NKT細胞を使った免疫細胞療法の臨床試験が千葉大学で進められています。
 
       
   
   
骨髄系免疫細胞 性質特徴
  顆粒球
 (好中球)
 
 
      
       
    顆粒球は自然免疫系の細胞です。

顆粒球には好中球,好酸球,好塩基球の3種類があります。

好中球は血液中に最も多く存在する顆粒球であり,白血球全体の60%をしめます。

好中球は細菌やウィルスに対して貪食機能を持っており,細胞内に細菌などを取り込み酵素で細菌を破壊し,死滅させます。

細菌の侵入に対しては,マクロファージなどから信号が出され,それにより好中球が引き寄せられ,細胞を貪食します。

好酸球は,寄生虫感染やアレルギー疾患で増加し,喘息のようなアレルギー反応を引き起こします。

また,好塩基球は 白血球全体の0.5%を占めるに過ぎず,他の顆粒球と異なり,異物細胞を貪食しません。

現在,この好塩基球のはたらきは数が少ないこともありよくわかっていません。

にの中には,アレルギー反応を起こす物質であるヒスタミンを放出する顆粒もあります。
 
       
単球
       
    単球とは単核白血球とも呼ばれ,全白血球のうち5%を占めます。

単球は,アメーバ様運動を行って移動することができ,血液中で細菌や異物と出会うと,その細菌や異物を貪食し,酵素で異物を分解します。

その後,断片化した異物を細胞表面に提示し,これをヘルパーT細胞に伝え,免疫反応が開始されます。
 
       
マクロファージ
       
    マクロファージは組織内に分布する大形のアメーバ状細胞です。

単球は組織に移行し,マクロファージに分化しますが,マクロファージは生体内をアメーバ運動し,死んだ細胞や体内に生じた変性物質や侵入した細菌などの異物を貪食し,清掃する役目も果たしています。

この貪食能力は,樹状細胞よりも高いものがあります。

また,異物の一部を抗原提示し,免疫情報をヘルパーT細胞へ伝えます。
 
       
樹状細胞
       
    樹状細胞は細胞の外側に,木の枝のような樹状突起を持っているという特徴があります。

樹状細胞は,抗原提示細胞といわれ,獲得免疫を発動させる免疫の司令塔のような細胞です。

この細胞は2011年ノーベル医学生理学賞を受賞したロックフェラー大学の故ラルフ・スタインマン教授によって,はじめてその機能を解明されました。

樹状細胞は,単球から,自然免疫の戦いで生ずるサイトカインの刺激で樹状細胞へと変化します。

成長した樹状細胞は体内に侵入したウイルスなどの抗原を取り込んで,T細胞に抗原の情報を伝達し,免疫反応を開始させます。

この抗原提示能力はマクロファージよりも,かなり高いといわれています。

一方,成熟したヘルパーT細胞は,樹状細胞を活性化させるサイトカインを出すことで,樹状細胞を活性化させています。

免疫細胞療法やがん免疫療法ではこの働きを利用した樹状細胞療法やペプチドワクチン療法がおこなわれています。
 
       

     
                 
       

 
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