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放射線療法とがん免疫治療
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放射線治療機器は,近年,技術革新より治療効果が飛躍的に向上すると共に,副作用は減少しています。
がん治療では腫瘍に対する精度が向上し,ピンポイントへの照射が可能となり,骨髄への照射を避けることで,リンパ球などの免疫細胞への影響も抑えることができるようになっています。
がん細胞に放射線照射をすることにより,免疫細胞が攻撃しやすくなるため,放射線治療後に免疫細胞療法を併用することによる相乗的な治療効果が報告されています。
放射線の腫瘍殺傷効果は,放射線単独によるものではなく,免疫細胞の補助的なはたらきが,その効果を支援しています。
放射線照射でがん細胞は死滅しますが,放射線のみですべてのがん細胞を殺傷できるわけではなく,まだ生き残っているがん細胞もあります
放射線を受けたがん細胞に免疫細胞が攻撃することで,これらを死滅させているのです。
放射線を照射されることで,がん細胞は弱ります。免疫細胞はこのように弱ったがん細胞を異質な細胞と認識し,これらを処理しようとしていると考えられています。
最近の研究では,がん細胞が放射線照射受けると,がん細胞がアポトーシス(細胞自死)を起こすだけでなく,ある種のタンパク質を放出し,免疫細胞を活性化させているという報告もあります。
がんに放射線を照射すると,照射部位とは,別の所にあるがんも消失することは,以前から報告されていました。
これは「アブスコバル効果」といわれ,そのメカニズムは不明ですが,上記の報告のように,放射線療法により,がん細胞が放出するタンパクが免疫細胞を活性化しているなら,照射部位とは別の部位のがんの消滅もありうることです。
このようなことから,放射線療法後に免疫細胞療法などによって免疫力を強化することは,相乗効果をあげることが期待できます。
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放射線と免疫療法を併用する放射線免疫療法の効果を実証
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現在,民間の免疫細胞療法をおこなうクリニックや,大学病院でもこのような放射線療法と免疫細胞療法を併用した研究が進められ,良好な治療成績が報告されています。
群馬大学医学部では,免疫細胞療法と放射線治療を組み合わせる免疫放射線療法の研究を進めています。
群馬大学医学部では2010年から2012年の2年間に免疫細胞療法を受けた様々ながん患者126人の中で10名に放射線治療を同時に行いました。
その中で,70代の女性は腎細胞がんの摘出後に,腹膜腔内に局所再発がみつかり,強度変調放射線治療機器トモセラピーによる治療と並行して,2週間に1回のペースで免疫細胞治療を計6回行いました。
その結果,腫瘍は縮小し,寝たきりの状態から歩行や食事ができるようにもなりました。
また,60代の男性は骨軟部腫瘍が手術後に再発し,抗がん剤治療を受けたましたががんは増大し,前の病院で「もう治療法はない」と見放され,本人が免疫細胞治療を希望したということです。
そこで活性化リンパ球療法と樹状細胞を患部に局所注射するという免疫細胞治療を併用しながら放射線治療機トモセラピーによる治療を受けたところ,腫瘍は徐々に縮小し,その後1年以上も縮小した状態が維持されていると報告されています。
また,民間のクリニックでも,免疫細胞療法と放射線療法の併用による治療効果が報告されています。
69歳女性の症例では,直腸がんの腫瘍摘出術おこない,術後に抗がん剤治療をおこないましたが,2年後,直腸がんの局所再発,肺への転移が発見されました。
一時は抗がん剤治療を行いますが,副作用が強くがん治療を断念しました。
そこで,局所再発部位と骨盤内リンパ節転移部位に定位的放射線照射をおこない,さらに癌樹状細胞療法をおこなったところ,局所再発部位のがんは消失し,樹状細胞を投与していない骨盤内リンパ節転移も消失したと報告されています。
このほかにも,免疫療法と放射線療法の併用が治療効果を高めるという報告は多数あり,今後の研究が期待されるところです。
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