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がんの手術と免疫治療
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がんの手術は,抗がん剤,放射線治療と共に,標準治療として確立し,がん治療の柱となっています。
この中で,手術は現在でも,がんの治療法として,第一選択とされることが多い治療です。
この手術療法は腫瘍を完全に摘出できれば,治癒の確実性の高い治療法といえるでしょう。
たとえば早期の胃がんで転移が無い場合は手術療法でほぼ100%治すことができます。
ところで,一般的ながんの手術では原発巣だけでなく,周辺のリンパ節をも切除するケースが普通です。
がんを完全に摘出したといえるのは,周囲の少数のリンパ節に転移している段階までで,それ以上進行していると根治手術は難しくなります。
がん治療において,第一選択となることが多い手術でも,手術後には,かなりの割合で再発が見られます。
たとえば,胃がんの手術は,がんの中でも治療成績がよいわれていますが,それでも,胃がん患者の約30%が再発してしまうのです。
これは,目にみえないがん細胞が,どこかに残ってしまっていたからだと考えられます。
現在では進行がんなどには,手術の他に放射線治療や化学療法を併用して,手術で取り切れない腫瘍を死滅させようという集学的治療が主流となっています。
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手術による免疫力の低下
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通常,手術後には免疫力は低下します。
手術は,言い換えれば,細胞がメスにより傷害されることでもあり,細胞の中にある成分が,細胞外に出ると,体内のセンサーが感知して炎症反応を引き起こします。
このような炎症は,細菌やウイルスの成分が引き起こす感染性の炎症と区別して,非感染性の自然炎症とも呼ばれています。
炎症は,免疫細胞が関与していますが,このような炎症が強くなると,この炎症を抑えようとする反応として,サイトカインIL-10が免疫細胞から放出されます。
また,この炎症に関わる免疫細胞であるマクロファージによりプロスタグランジンE2(PGE2)も産生されます。
これらの物質は免疫細胞の活性化や増殖を抑える作用があるため,手術後は免疫力が低下するのです。
さらには,手術で使用される麻酔にも,免疫細胞のはたらきを抑制するはたらきがあります。
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手術による免疫力の低下を免疫療法で補う
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免疫細胞療法などの免疫療法は,正常細胞に与えるダメージがなく,手術不能な場合や術後の補助療法として期待されています。
特に手術では,目に見えないがん細胞が広がっている可能性もあり,目に見えないものを完全に切除することは難しく,再発もしばしば見られます。
この術後の再発予防は免疫療法の最も適しているところでもあり,手術で低下した免疫力を補うこともできます。
事実,肺がんや肝臓がんなど術後に免疫細胞療法を行うと,再発率や死亡率が低下するということは,データとして報告されています。
さらに,最近では,分子標的治療薬と免疫細胞療法の併用によって,転移がんや再発がんでも腫瘍消失などが報告されています。
このように,免疫療法は手術の補助療法としては適していると考えられます。
すでに,説明したように,手術後には免疫の力が弱くなりますが,その細胞数が一番少ないと考えられるのは,手術直後です。
したがって,免疫療法は手術直前からはじめることが理想的だともいわれています。
ただし,ここで問題になることは,このような免疫治療に懐疑的で,否定的な医師も少なからずいるということであり,主治医によっては,免疫療法を受けにくい場合もあるでしょう。
免疫細胞療法を実施しているクリニックの中には,主治医と積極的に連絡をとってくれるところもありますので,そのようなクリニックに問いあわせてみるのもよいでしょう。
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